ビギナー向けではないと思いますが、鑑賞はいいです。
★★★★☆
初めに断っておくこととして、私の古典のレベルは高校のセンターレベルであることを念頭におき、以下のレビューをお読みください。
この本は枕草子の現代語訳、本文、鑑賞の3つで一つの随筆を構成しています。
また、編者の分類方法として1ものづくし2随想3宮廷実録の3部構成とされています。
まずこの本のいいところを挙げると編者の鑑賞の書き方です。私は枕草子は高校で学習し、原文のままでもある程度のものは読めるだけの力はありますが、
この本では一つ一つの作品の製作背景が鑑賞として書かれており、新たな枕草子の読み方を教えられた感じです。
例えば「春はあけぼの」における雲が紫である点に着目したり、炭の色の描写に着目したりと、成程こういう見方があるのかというものがあり、
また、「思はん子を」では昔の法師の捉えられ方を解説した上で、清少納言の意見を述べたりと、読めるだけではわからなかった知識を身に付けれました。
ですが星5つにできない理由は以下の2つです。
まず現代語訳がいまいち現代語らしくない。もしくは直訳すぎるのでは?という感を与えられます。
要はテストの答案としてはいいのかもしれませんが、読む方としては話の内容がわかりにくい。
いっそ原文のまま読んだ方が分かりやすい気がします。
また、古語の意味を紹介する注釈が不足していると思います。文の最初だけしっかり載せて、後半の単語は紹介されていないことがほとんどです。
そしてもう一つのいまいちな点は中略がされすぎていることです。
同じようなことが書いてあるだけなのだから略してもいいだろうというのはわかります。
ですが枕草子を読む人というのは、例えば「春はあけぼの」に感化され、清少納言がどのようなセンスを持った人なのか、興味を持った方もいられると思います。
ですから、清少納言が「をかし」と思ったものはなにがあるのだろうといった、清少納言の細かなとこまでを理解するには不向きといわざるをえないでしょう。
よって統括すると、この本の編者によれば古典ビギナー向けとされていますが、原文がある程度理解できなければ内容理解に苦しむ可能性があり、
一方で解説がしっかりしているので、古典に興味はあるけど、歴史的事情に詳しくなく、枕草子を現代の感覚でしか読めていない方にはいいのではないでしょうか。
おそらく、古典を原文のままある程度読める初級者〜中級者向けではないでしょうか。
上級者や、枕草子の細かいところまで知りたいという方には不向きであると思います。