天衣無縫の至芸
★★★★☆
1965~82年に録音された音源中からビセカツ氏が厳選したベスト・アルバム。音質面での統一感を欠くが、代わりに登川誠仁、比嘉春子等との様々なアンサンブル、ライブ録音が収録され、『島唄の神様』の多彩な活動を垣間見れる内容となっている。こうやって聴くとやはりライブで本領を発揮する人だったようで、「意見あやぐ」「下千鳥」といった曲での無限のような豊かなスケール感は本当に素晴らしい。
これらの曲も嘉手苅林昌の人生も沖縄の底辺の庶民の生活のものだが、その飄々とした語り口は一種突き抜けたような明るささえ漂わせ、神々しいまでに深い唄声と共にこれらの曲の本来持っていた香りを伝えてくれるような、正に天衣無縫の至芸である。