日蓮主義から見た昭和前史としては最高
★★★★☆
5.15や2.26を扱った本は多々あるが、本書は当時の軍部ならびに民族派の精神的支柱ともなったとされる法華経から見た独特の捉え方をしている。
なぜ法華経なのか。この視点には、明治以降の、あるいはそれ以前も含めて仏教、とくに日蓮の果たしてきた役割についてもうまく触れられていて、たぶん、ここに日本の精神性の原点があると思われる。
ただ、なぜ法華経に多くの青年将校や北一輝、西田税などが傾注したのかは、残念ながら不明だった。これは、私に仏教心がないからかもしれず、まだまだ勉強の余地はあるようだ。
福田和也の石原莞爾の本など、もろもろの昭和前史の本があるが、本書には足元にも及ばないぐらい、内容は深い。
本書は絶版になっていて、マーケットプレースで求めたが、いい本が死んでいくのは残念である。