法然てどんな人?
★★★☆☆
親鸞について書かれたものは多い。しかしその師である法然に関する本は少ないのではないか。本書は法然の全体像を理解するのに格好のものだ。平安の世から鎌倉幕府の時代にかけて、念仏の教えがどうしてひろまったのか、そして何故弾圧されたのか。その高度に政治的な領域にまで及んで、鋭い考察がなされている。残念なことに、入門書としてみれば政治がらみの駆け引きや謀略についての論述はやや複雑すぎたきらいがある。しかしながら、法然というひとが法王、貴族といった要人と交わりながらも、決してその政治力を求めなかったこと、さらにかれの「浄土」の教えが呪術とは無縁なものであったということを知って、改めて法然という存在の大きさを思い知らされた。