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美術館の可能性

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本
ブランド: 学芸出版社
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決して専門書ではありません。美術館を訪ねる人・建築に興味のある人にお勧めします。 ★★★★★
地域再生の切り札としての「ミュージアム」ブームが吹きぬけたあと、そこに何が起こっているのか?

学芸員希望者は毎年増えているのに現役の学芸員がけっして満足して仕事をしていない。美術館の変化に対して学芸員の立場から意見を言う場がない。

2003年、2004年と京都国立博物館でスター・ウォーズ展が開かれた。企画・展示の多様化は今後も美術館に期待される側面ではあるが、問題はその企画がいかに館の活動に根付いているかである。学芸員の研究も美術館のそれまでの蓄積もいかされないし、次への継続性もまったく望めない。そこには美術館の専門性との乖離が見られるのではないだろうか。

また、美術品を収蔵・展示する美術館は建物という枠を超えて【美術館建築】への注目も高い。しかしながら美術館には保存・展示すべき「もの」があるという原点があり、作品鑑賞への影響は当然のこととして、展示物への光・温湿度調整・展示作業など、熟慮されなければいけない条件を満たしながらの構造物でもあるという視点はどう担保されているのか。

並木氏は美術作品を研究する立場、そして学芸員として美術館に勤務した立場から『作品あっての美術館』を基本の視点とし(本書前半)、中川氏は建築の立場から、美術館から本来的な機能が失われようとするときに、そのイメージが社会的に利用され、「まちづくり」のさまざまな事例のなかにイメージが多様にたくみに利用されていることを示している(本書後半)。

常設展・企画展と美術館を訪れる方々にとっては、何か以前と空気が変わってきたとうっすら感じていたこと・・その【何故】がここに書かれている。本書を読み終えて、研究・調査を基盤とした「文化の砦」が砂楼のように崩れはじめている怖さを感じ、変化からは敢えて守らなければいけないものの中に苦悩する学芸員の姿が見えてきた。少なくとも国立に関しては有る程度公の支援による保障は必要でないかと考える。
本書は250頁程度。非常に凝縮された内容なのに、今の本の流通を考えると書店には並ばないタイプの本。新書の形にしてでも多くの方に読まれてほしい内容です。