「俺たちが最初で、俺たちが最後だ」――音が縦横無尽に跳躍し、表現の予定調和を徹底的に破壊へと追いやる快感。
★★★★★
ロック がただ形としての音楽を維持していくしかなくなった時、パンクは現れた。
そして、そのパンクさえもロックあるいはロックンロールのフォーマットから自由になり得ないというジレンマを抱え、形式、様式が「思想」までも規定してしまう、そうした危機感が生まれつつあった70年代末、
ザ・ポップ・グループ はシーンの中に登場した。
メンバーは5名。結成時は全員17歳。ほとんど音楽的なキャリアもなく、おそらく既製のロックに対する思い入れも、語るべき言葉もなかったとのではないか。
あったのは、ただあり余る激しい自己表出への欲望とパッション。そして突出したセンスと類稀な「才能」である。
「ザ・ポップ・グループ」というユニット名は、シーンに対するアイロニー、あるいはカウンター的な意図を示すものであろう。
このネーミングは、実にシンプルであり、凝り固まった教条的な匂いもない、オープンで自由な発想である。
プロデュースを務めるのは、マトゥンビのリーダー、デニス・ボーヴェル。
なぜ、彼を起用したのかという問いに対し、彼らはこう答えている。
「レゲエ のプロデューサーは良い音を得るために手段を問わないからだ。そして、レコードからロックらしさを排除するためだ」
当時の彼らの思いの中には、パンク・ムーブメントを含むロックなるもの、それを成立させている方法論とイデオロギーへの強烈な不信感、そして、既存のロックを徹底的に解体し尽くそうという指向性が抜きがたく存在している。
このアルバムはそうした彼らの持つ資質が、ボーヴェルによって過剰なまでに「演出」されたダブ的手法の駆使を通してさらに増幅された ――。
――それこそ、音が縦横無尽に跳躍しまくるような、自由奔放な作品――それまでのいかなる既存のジャンルにも納まらないノンジャンルな作品として結実している。
ここには、卓越した演奏テクニックをひけらかそうとか、聴きやすく、心地よい、様式としてまとまったサウンドを作ろうとか、高度な音楽性を表現しようとか、そうした既存のシーンに数多見られた諸々のコンテクストから徹底して自由であろうとする、従来の音楽のどんな「テンプレート」にも当てはまらない強烈な意志が存在している。
当時の「時代精神」が持っていた激しく燃え盛るようなカオティックな状況を全身で体現し、メタフォリックなメッセージを叩きつける――。彼らの衝動はそのような形でしか表現し得なかった。。。
暴力。狂気。破壊。まさしく カオス のような音塊。
リズム・セクションが創出するダイナミックでヴィヴィッドなファンク・ビートに絡みつくフリーキーなサックスとジャジーなギター。
これらを丸ごと切り裂き、容赦なく解体し、原形をとどめないような形で再構成する ボーヴェル の ダブ。
そうした カオティック な音響の中で浮遊し、聴き手の期待をことごとく粉砕する、時に呪文のように、時に絶叫するように地の底から響き渡ってくるがごとくのヴォーカル。
かつて、セックス・ピストルズを脱退し、後にパブリック・イメージ・リミテッドを結成するに及んだ ジョン・ライドンが言い放った言葉「ロックは死んだ」――。
――この言葉は、まさしくこの作品、「Y」にこそ冠されるべきものである。
今でも折に触れて、この作品に耳を傾ける。
はじめて聞いたときの衝撃は、今でも色褪せていない。
なんでこれが名盤なの?
★☆☆☆☆
退屈の一言。
やたら評価が高いようですが、これを「いい」と言わなければいけないプレッシャーでもあるのかな?
期待して購入したのですが、まったく面白くありませんでした。
ジャケ帯に書いてあったようなファンクネスなんてまったく感じませんでした。
「歴史的名盤」の謳い文句につられてお金を払った私がバカでした。
音の限界に挑んだ記録
★★★★★
1979年作、2007年リマスタリング。
バンド自体は2年ほどで消滅したものの、Massive Attackを筆頭とするブリストル勢の興隆により再評価され、00年代のポストパンク/ニューウェーヴリバイバルにより、さらに評価が押し上げられました。
全曲、ファンクとレゲエの中間のようなリズムを土台に、ザクザクとしたギターカッティングとマーク・スチュワートの咆哮のようなVo.、サックス、ピアノ、バイオリンがダブ処理され、音の限界に挑むかのように縦横無尽に飛び交っております。個人的に、ヒップホップを先取りしたようなリズムのTr.4、ドラムンベースをロック化したようなTr.9がお気に入りです。
リマスタリングについては、素人耳ではありますが、1996年盤と当2007年(Rhino)盤を比べると、音量自体に大差はありませんが、07年盤の方がノイズが低減され、重低音が増しているものの、Vo./Gt/etc.の音が小さく感じられます。おそらく、現代のヒップホップに拮抗するようにリマスタリングされた結果ではないかと思いますが、個人的に、07年盤は音の縦横無尽さが薄れたように感じられ、1996年盤の方が好みです。しかし2007年盤にはボーナストラックで"3:38"が収録されており、どちらがよいか悩むところです。1996年盤をお持ちで買い替えようか検討中の方は、2007年盤がレンタル店にあれば、借りて聴き比べてみた方がいいかもしれません。
もちろん、再発年別のリマスターの差がこの作品の本質を左右している訳ではなく、作品そのものの先鋭さ、傑作であることに揺るぎはありません。
おすすめです。
変ったバンド。
★★★☆☆
民族的なプリミティブなジャケットにまず、目が行ってしまう本作。
曲は、合っているんじゃないかな、この雰囲気に。
一風変ったバンドを聴きたい人にはお勧めです。
ちなみに、パンクらしいです。
全然そんな感じは受けませんが。
完全にOut of 眼中でした・・・反省
★★★★☆
確かにその時代に居たものの、この手のグループに対しては食わず嫌い(聴かず嫌い)のまま今に至りました。ポスト・パンクだニュー・ウェイヴだをまとめて毛嫌いしていた訳ではありませんが、売れ線中心に音楽を聴いていればそういう結果になっても不思議ではありません。
もとい、ようやく対峙したこのグループの1st('79年作)。グループ名からは最もかけ離れたところにあるような楽曲の全てが、先ず小生の耳には新鮮でした。
鮮烈なイントロから引き込まれる[1]から、アヴァンギャルドかフリージャズへも侵食して行きそうな[3]を筆頭に、これだけ不穏なテンション(^^;を維持させながら最後まで引っ張って行かれるというのも珍しいですね。
ある意味、一番面白い時期に一番面白いことを演(や)っている連中の横を耳栓をして通り過ぎていたのかなぁ・・・と後悔の念(ちょっと大げさですが)を軽く感じました。聴いておくべき作品の一つと言ってもイイかもしれません。