２００６年版「ジェイン・エア」ロチェスタ役のToby Stephensが、その１０年前に出演しているドラマです。この人はその時の年齢に合った良い役をしっかりと演じて来た俳優なのだなと思いました。ここでは貴族やジェントルマンではなく、ヨーマン（富裕な自営農）の青年ギルバートの一途な心を若々しく表現しています。姿もロチェスタの時より細くて、いかにも青年らしい軽やかな動きを見せています。

アン・ブロンテの同名の小説をドラマ化して、哀愁を帯びたテーマ曲が流れ、ロマンティックでいい感じの作品になっています。ただ、ちょっと問題なのは相手役との取り合わせです。（その点2006「ジェイン・エア」はベスト・マッチで、もうこれ以上new versionは作らないでと思うくらいでした。）
このドラマでちょっと戸惑うのは、相手役、というか、物語のメインであるヘレンを演じているのが、あの強烈なリード夫人役Tara Fitzgeraldだったことです。

このDVDを買う時、2006年版「ジェイン・エア」を先に見てしまった私にはそれが一番心配でした。でも、見てみたら、ちゃんとヘレンらしく見え、リード夫人がいる！とは見えなかったのでほっとしました。

ただ、やはり原作だともっと若いのに、と引っ掛かる気持ちはありました。原作でギルバートが初めてこのミセス・グレアムと名乗るヘレンに出会った時の印象は、幼い息子を連れた、人目を引く美貌のうら若い未亡人というものでした。白い肌と艶やかな黒髪がみずみずしく描かれているのです。このみずみずしさが無いのが残念でした。それでも、酒と放蕩三昧の夫から逃れて、ひっそりと自活する女の強さとメランコリックな雰囲気をうまく表現していて素敵に見えました。

でも、でも、やっぱり少し残念。Toby Stephensのほうは原作よりもすてきなのに・・・。
もう一度、作り直してもらいたい。でも、彼にはもうこの役はできません。２０代だったから出来た役だったのに。こんなに魅力的なギルバート像を作りあげたのに・・・。

こうなったら、もうあきらめて、ヘレンとギルバートがともに２４歳くらいという原作の設定は置いといて、白い肌と輝く黒髪も忘れて、この映像で見えるものをそのまま受け入れることにしましょう。
そうすればだいじょうぶ、とても素晴らしい作品で何かの賞を受賞しているようです。胸の開いた絹のドレスを着て大きな十字架のチョーカーをつけたヘレンの姿も美しくみえます。
★４つにしましたがほんとは４.５いや５つだってかまわないかも。

英語字幕も最初のプログラムにサブタイトルの項目があるので、すぐ表示できます。聞き取りもあまり難しくないので、日本語字幕がなくても理解できると思います。それに、この内容でこの価格ですからとても買い得です。