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鳳仙花―中上健次選集〈4〉 (小学館文庫)

価格: ¥880
カテゴリ: 文庫
ブランド: 小学館
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「濃い」人間関係と生き方 ★★★★★
 「枯木灘」を読んでから手に取ったのだが、結果的には正解だった。これは、「枯木灘」の主人公の母親の青春の物語だ。
 本書の中に「日は濃すぎるほど濃かった」という印象的な言葉がある。日射しに対して「強い」でも「熱い」でも「鋭い」でもなく、「濃い」と言う表現は初めてだ。「濃い」というのは、彼の一族が生きる地域と血族の関係、それから生き方そのものの内実の密度を連想させる。それは同時に、主人公や作者が見聞きしてきた年長の男達の生き方のことだろうか。
 自然の風や匂い、草いきれ。背景にとぎれることのない「兄妹心中」の調べ。家事、しぐさや小物の描写までもがストーリーをシッカリと支えている。大きな事件があるわけでもなく、広い舞台を相手にしているわけでもないが、生きていることや家族の日常生活、寝て・起きて・働いて・食って・飲んで・性交する、そのものの確実さや、力強さを感じる。
 もっと若いときに読みたかったし、作家にはもっと生きていて欲しかった。
 娘である中上紀による巻末解説も良かった。作家の日常や、別の視点で見た一族やふるさとの様子、そして作家の最後の祖母とのエピソードなど、今も家族の物語が続いていることを感じた。