人間は皆、思いどおりにならない悲しいことを抱えている存在
★★★★☆
女性作家が「恋」の諸相を教えてくれる恋愛論です。
冒頭で著者は「ビタミン剤とホルモン剤の数十倍の効果」と、薬効を示しながら、次のように恋愛を讃えています。
恋愛は生きていることをもっとも強く感じることができるステージ。
いつもと同じはずの時間が輝きに満ちて充実しているし、本来の自分
より大きな力が出てきて、笑顔が溢れ、やさしくなります。
自身もまだまだ現役。
60歳を過ぎても、「頑張って一所懸命に顔を磨いて、スタイルを維持し、ファッションにも気を遣」っています。たとえ70歳を過ぎたとしても、もしかしたら若い男性をゲットできるかもしれないという気持ちを忘れないのです。
もちろん後輩の世代にも、いろんなことを教えてくれます。
たとえば、著者は、男性と女性が異なっている点を示し、よく知っておいたほうがいい、とアドバイスしています。
少し引用してみましょう。
男の恋はインターネットを例にすれば、「名前をつけて保存」。
女性の場合は「上書き保存」
男性は、一つひとつの恋愛を別のフォルダに残して大事にします
が、女性は、今までのものを全部消去して上書きします。今はこれ
がすべてと。
男は恋愛の火を焚き火のように持続的に抱えてつなげていくのが
苦手です。(中略)
そこへいくと、恋する女性の炎は連続して長く燃えさかります。
オジサンの私としては、ちょっと背筋が寒くなったように感じるんですが……。
他にも、
・恋愛に「待てば海路の日和あり」はない
・夫婦といえども男と女
など、含蓄の深い格言がたくさん出てきます。
思うにまかせぬこと、うまくいかないという不全感との付き合い方を考えぬいたとき、恋愛も同じことだと気付きます。
うまくいかないこととどう付き合うか。恋愛を見つめることで見えてくるものがあるはず。
重要なポイントは書いてある、しかし十分ではない
★★★☆☆
恋愛と結婚についてのエッセイです。ところどころになるほど!と思う指摘があります。
さすがに作家だけあり、鋭い指摘や分析だ、と思うところがあります。
個人的には、もっと深い思考が見えるのではないかと期待していましたので、その点少々軽い感じが否めません。それは分量にもよると思いました。新書版で本文166ページ。年寄りむけなのか?と思う字の大きさに驚きました。つまり、鋭い指摘がありながら、全体量が少ないので、字を大きくして、本体880円にしたかった(?)のかも、出版社が。作家のネームバリューで?私はそれは理解できません。
880円なら、小説の文庫を買ったほうが面白かったと思います。今のご時世、この内容(よい部分も多いが、それでも)と量では値段に釣り合わない、というのはあまりに厳しい意見でしょうか。