新しいタイプの実践書として評価できる
★★★☆☆
本書は、多様性教育の基本的な考え方を論じ、その実践例を紹介するものである。ここでいう多様性教育とは、「自分たち自身の間にあるさまざまな違いへの自覚を深めつつ、お互いの人間としての共通性を再認識し、差別をとらえる視点や概念、差別に取り組むスキルや生き方を学んで、対等な関係づくりと社会変革を促そうとする教育」であり、具体的な行動力を育もうとする点に特徴があるとされる。
この、行動力を育む教育をめざすという点で、本書は実践的であり評価できる。とりわけ、本書における人権教育実践の系統性について説明されている点は高く評価できる。従来、人権教育実践は単発的であって、その系統性についてはそれほど議論されてこなかったからである。
ただし、多様性教育の考え方はよくわかるが、実際に実践するためにはもう一歩突っ込んでほしかった気がする。星三つにしてしまったが、四つの方に近かった。