碧梧桐の写生句を載せてはいるが…
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近代俳人の大御所高浜虚子の俳句入門書である。原著は大正7年(1918年)発行なので、以来90年経つ。それでもなお読み継がれている俳句鑑賞の書。
子規は、芭蕉より蕪村こそ明治の新しい俳句のよき模範だと肩入れしてきたが、虚子はその主張に異議申し立てをするように「芭蕉の文学」である俳句という言い方をしている。これは「新傾向」俳句否定の端的な表現だった。碧梧桐の伝統俳句破壊に対する反論でもあった。虚子の花鳥諷詠を否定する新興俳句に対してはまだ多くを語れる時期には達していなかったこともある。「赤い椿白い椿と落ちにけり 碧梧桐」の写生句を載せている。当然のことながら虚子自らの句を載せていない。