摂食障害は「こころの病、生き方の問題、生涯かけて治す病気」
★★★★☆
「知ろうとしない」「開き直る」「嘘をつく」摂食障害の患者さんの「こころ」に焦点を当てて治療の必要性を説いている。この先生が主治医だったらかなわない、と思った。
摂食障害の患者さんは、自分の周りの人やものを思い通りに支配しようとするという。体重や食べものに対するコントロールに成功して自己愛的なプライドが保たれている間は治療を拒否し、孤高の人だった患者さんが、過食になってコントロールがきかなくなると人が変わったように荒れて家族に反抗したり、治療者に助けを求めたりする。このときが「健康な自分」を取り戻すチャンスだという。「際限なく太ってしまうのではないか」という不安を治療者に訴える(助けを求める)という行為を通じて、他人との情緒的な繋がりを取り戻すのが治療の第一歩・・・。
過食は悪いことではない。悲しみを感じなくするための行動や、やせを追求する行動をやめるのが課題、という著者の主張も客観的には納得できた。食べたものを出さないでしっかり受け止めることが、人間関係において湧き上がってくる感情を受け止めて「不安を抱えながら生きていく」姿勢に繋がるのだろう。
ひとつだけ、著者が入院治療を奨励している点に疑問を感じた。摂食障害という疾患を理解している医療機関が日本にはほとんどないのが現状だから・・・。