戦後思想史に残る記念碑的名著
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この親書は名著として誉れ高い『ヨーロッパの個人主義』(講談社新書)に38年後の文章を補追したものです。
驚くのは、若きニーチェ学徒だった西尾氏が33歳の時書いた、日本とヨーロッパの文明論的関係論が、一世代以上のちの38年後にも何ら古くなっていないことです。
逆に言えば、日本が囚われた近代化の宿命から、40年近くたっても日本人は全く逃れられていないということです。それはそのまま戦後64年の日本の歩みをなぞったものにもなります。
政権交代に沸き立つ日本のメディアは、かえって日本の歩みを逆戻りさせた政治勢力のプロパガンダ機関にしかなっていないことが、本書の哲学的文明論から明らかにされます。
取り扱ったテーマは重要で深いものですが、新書なので読みやすく、若い世代、特に高校生に真剣に読んでもらいたい本です。