心の眼で真実を見極める『夢』さえもトリックアイテムに置き換える、刷り替え妙。
★★★★★
★5の上。
非日常に日常的に侵食されることの恐怖を描いた現代劇ミステリな表題作長編『鬼燈の島』の第8話から第13話までと、滅茶ステキな幻想奇譚『トガビト』を収録した第2巻は著者の19冊目。
ほか、『鬼燈学園裏山の道略図』1頁。後描き漫画『非日常的な日常』4頁。
勘違いによる恐怖はもはや慢性化し、子供達はついに結束します。
脱出を企てた子供たちと阻止しようとする大人たちによる壮絶な鬼ごっこの始まりです。
盲信してるため子供たちは真剣勝負。窮鼠猫を噛むよろしく、手加減無しの反撃に、さしもの大人たちもさすがにブチキレ。
ここまできて『過去ここで事故で死んだ者がいる』『何かを闇に葬るまでは幽閉しなければならない子供たちがいる』『園長は何かを催促されている』ことくらいしか未だに確定しておらず、核心部に至っては何一つ解けそうで解けません。
冒頭部で、鬼気迫る想いで何かを訴えようとした雪乃の語られなかった言葉こそを想像してみてくださいまし。
雪乃が潜入捜査官という線はありがちすぎて無さげですが、実は桑舘が最後の瞬間に命がけで子供たちを護るんじゃないかとか、墓がある=死人をトリックと信じるなら、ワンピース少女は何を訴えようとしているのかとか、そして物語の根底にある『闇に葬らなくてはならない存在』も含めて、噛めば噛むほど味わい深い作品です。
8頁のカラー部が1巻同様モノクロ落としだったことで★5の特上はオアズケ。
ことオリジナル長編では徹頭徹尾『自らの手を汚そうと護るために闘う』人間ドラマを描き続けてきた三部けいの作家魂を信じるなら、この作品が大人のエゴを見せるためのドラマでないことは明白。無論、幕を閉じた瞬間の拍手の大きさでしか真の評価はできませんが、敢えて『至高の名作』と呼ばせてもらいます。
勘違いや妄想が産んだ恐怖を目一杯膨らませ、ともあれ物語は3巻へと続きます。