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てるてる坊主の照子さん〈上〉 (新潮文庫)

価格: ¥460
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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   人心を捉えるツボを心憎いまでに備えた小説である。人物キャラクターが鮮明で、ほのぼのしたホームドラマの体裁を保ちながら、平凡とはいえない家族の肖像が生き生きと描かれているのだ。読者を笑わせ時にほろりとさせる。そんな手際が光る。

   タイトルにも登場の照子は岩田春男の妻。春男が復員し、大阪池田市でアメリカ仕込みのパン工場を始めたころから、照子の強烈な個性が発揮される。池田市で初のテレビ喫茶を開き、4人の娘のうち長女にフィギュアスケートの才能があると知るや一流コーチにつかせ、次女にタレント的能力があると判断するや舞台に立たせる。天啓にも似たひらめきと夢を孕んだ上昇志向は、娘たちをやがてオリンピック選手や大スターの地位へ押し上げるに至る。

   背景である昭和半ばという時代は、戦争の傷跡を覆ってさらに未来を信じ、豊かさを率直に求めることのできた時代だったのだということが、よく理解される。かたや会話だけでなく地の文にも大阪弁があふれ、そのテンポの良さがストーリー展開の軽快さを促す。そして照子のエネルギッシュさとは裏腹の、穏やかでのほほんとした春男の飄逸(ひょういつ)さが妙に心地よい。惜しむらくは長女次女に比べて下の2人の姉妹の陰が薄く、家族全体のダイナミズムとして描かれなかったことだろう。

   岩田家のモデルは、著者なかにし礼の妻の家族。次女は女優のいしだあゆみである。(松平盟子)

前向きな明るさに引き込まれるうううう ★★★★★
なかにし礼さんの奥様の実家のお話。「赤い月」「兄弟」という2つの作品を読んでから、これを読んで下さい。なかにしさんの小学生から作詞家になってからまでの半生記がつづられています。満州戦線から日本へ帰国するまでの「赤い月」は、日本という国と自分の生きる意味をすさまじいタッチで書かれていますが、「なんだか読んでいたら、つらくて、でも面白いけど、、、。」という感じ。函館からレコード大賞の「兄弟」は、お兄さんと音楽の神様の間で懸命に生きる内容ですが、「家族なあ。兄弟なあ。ううん。つらいなあ。でも面白いけど、、、。」という感じ。どちらもお母さんに対する愛情と日本というもの対する愛情を欲しながら、溢れながら昭和という時代のどちらかというと暗めな部分が表現されています。
しかし、この「てるてる」はま逆。明るい。前向き。元気がでちゃう!ここに至って救われる想いになります。この対照的な内容の中でも、「照子」さんの愛情と「波子」さんの愛情は違うようで、通じるものを感じます。読めば読むほど救われる内容です。
底抜けに明るく、かつ涙を誘う親子の物語 ★★★★★
なかにし礼は、静かで暗い人らしいのですが、物語は底抜けに明るく、とてつもなく面白いのです。グルノーブル・オリンピックにでた石田治子といしだあゆみの春子・夏子の成長物語と情熱的な母・照子とのんびりやの春男の家族の物語です。NHKの朝ドラでは秋子と冬子も自己実現するハッピー物語となっていますが、原作では、照子は春子と夏子にばかり力を入れ、秋子と冬子には愛情を注ぎませんでした。とはいえ、実際には、秋子はフィギュアの関西選手権で優勝し、男子フィギュア選手と結婚しますし、冬子、つまり、なかにし礼の奥さんとなる末っ子は宝塚音楽学校に進み、1年余り歌手となる石田ゆりです。(NHKのドラマでは秋子は日清食品と協力する発明家に、冬子はパン屋になることになっていましたが)
情熱的で積極的な母と、のんびり型で人柄のいい父親に育てられ、4姉妹は、それぞれ光る金となるのです。目標を設定し、自己実現のために努力する大切さを笑いの中で描き出します。
底抜けに明るく、ほっとする楽しい作品でしたが、涙を流さざるを得ない場面も出てきて、感動しました。親として子供に愛情を込めて育てる大切さと、過度の注ぎ方がいけないことを読者に感じさせます。
スポーツは魂の錬金術や ★★★☆☆
 TVドラマで観ていたら、このあまりに出来すぎた夢のようなお話も、「涙と笑いと感動」(文庫カバーに出てくる言葉)をもって存分に楽しめたかもしれない。いっそ最初から実話の装いを鮮明にしてくれていたら、戦後復興から高度成長期にかけての「市井の戦後史」(久世光彦さんの解説に出てくる言葉)を貫く「庶民」の上昇志向に素直に感情移入ができて、波瀾のストーリーに手に汗握り、はては感涙を誘われたかもしれない。やはりこの作品は、なかにし礼さんの達意の「錬文術」にあっさりと降参してこそ心ゆくまで堪能できる、よくできたホームコメディなのだと思う。(下巻に出てくる岩田春男の言葉が浮いていて、でも妙に感動的でおかしい。「スポーツは魂の錬金術や」。)
「てるてる家族」の原作を読む ★★★★★
ご存知、朝の連ドラ「てるてる家族」の原作です。ドラマを見ている分には、高度成長期、大阪郊外の元気な家族の物語とばかり思っていたのですが、ある家族を通して語られた戦後史という視点で見るとおくが深い。四女と結婚して、この家族の一員となった著者の感じた「不思議」が、執筆の原点でしょうか。奥様の家族、そして、自身の母の物語「赤い月」と、激動の時代に生まれ、今日にいたる世代の、ひとつの証言とも感じました。著者の言う「魂」の記録という意味では、この本を読むと「赤い月」も読みたくなりますね。
戦後の池田市が活き活きと描かれる ★★★★★
主人公の照子さんは、女優いしだあゆみさんの母親がモデルなのだそうですが、なんとも元気で勢いのある方だったようです。パン屋から、テレビ喫茶を流行らせ、梅田に進出していくあたりも凄いですが、そこから娘二人をフィギュアスケートの選手に育てるところも、今でいう教育ママ、もしくはステージ・ママのように気合が入っています。戦後の混乱期をものともせず、娘達を叱咤激励しながら育てていく姿は、感動的でさえあります。全体として、1冊目は、NHKテレビドラマでもほぼ忠実に再現されていたような気がしました。