ま、お得な1冊じゃないでしょうか
★★★★★
蓮實重彦インタビュー「批評の断念/断念としての批評」に惹かれて、古書店で購入…ゴメン、売り上げに貢献できなくて。
ま、それは兎も角。
「かつて、わたくしは『書評=万引き説』という仮説をとなえたことがあるのですが、れっきとした窃盗が『万引き』の名のもとにしばしば大目にみられてしまうように、書評もまた、れっきとした批評でありながら、どんなにいい加減なことを書いても、あれは『書評』だからという理由で許されてしまう。書評家という職業が成立するとするなら、それは『万引き』のように結局は許される ― ということは、本格的な悪に手を染めようとする強い自覚もない ― ような短いテクストばかり書くことに馴れた不特定多数の集団ということになるでしょう。これは考えるだに不気味な集団です」(p352)とあって、当方は職業的書評家などではないし、何もそこでの文脈である「文学」に積極的に関わろうという意識など微塵も持ち合わせてはいないものの、こうしてレビュー投稿などしているワケだから、一応は真剣に受け止め(るフリくらいはし)なくてはなるまい。考えてみます。
あと、p342で『「ボヴァリー夫人」論』完成の遅れを言い訳しているが、しかし蓮實がそこで自分に課しているハードルの高さはほとんど跳び越えるのが不可能であるような水準のものであって、こりゃ遺作としてしか完成せんワ、と思った次第。あるいは蓮實自身が折に触れて言及するように、一群の断片的論考の散在が蓮實の夢見ている場所を虚焦点として星座を形作る、とか。それともいずれかの時点で、明確な悪意をもって、「厚顔無恥」に転じる可能性も…あるかなァ?