歌手とオケは良いのだが……
★★★☆☆
今回の評価には、多分に私の嗜好が入っております。歌手やオケには特に不満はありません。
(オケで2・3回、ホルンが怪しい音を出しましたが、許容範囲内です)
映像ソフトの利点は歌手の表情や動き(芝居)が、よりはっきりと見える点です。
恋に恋するタティアナと、侯爵夫人としての矜持を守ったタティアナを演じ分けたエレーナ・プロキナ。
どれだけタティアナのことを想っているか、切々と歌い上げるグレーミン侯爵役のフローデ・オルセン。
この2名の歌と演技は本DVDにおける最大級の見所と感じた次第。
しかし、肝心のシナリオはちょっと無理があるのでは?と思うのです。
第1幕における、夢見る夢子ちゃん状態のタティアナは分かります。田舎のそこそこ裕福な家の令嬢で有れば
世間知らずでしょうから、「いつか王子様が」と思っていても不思議ではありません。
ですが、第2幕の(このオペラの肝の部分)オネーギンとレンスキーが決闘に至る部分は、どう好意的に
見ても強引さを免れないのです(レンスキーが直情的な人としても)。
嫉妬が積もり積もって、という結果であればまだ分かるのですが…
またクライマックスである、第3幕でオネーギンがタティアナ口説くシーンも、何故に?と疑問符が付いて
しまうのです。第1幕でタティアナの告白を足蹴にした、オネーギンはどこへ行ったのだ?と。
レンスキーを殺めたことで出来てしまった心の空白を埋める為だけに、タティアナに迫ったのでは?としか
考えられないのです。
実際、タティアナに「今更何で?」と訊かれてもオネーギンは「この胸の願いと告白を、すべてあなたの
前でぶちまけたいのだ」としか答えていないのです。
以上、オペラのシナリオ自体に?なので、星3つとしました。
附:DVDの字幕ですが、重唱部分については一人分しか表示されません。理解度を深める為には、同梱されている
ガイドブック内にある対訳を参照する形になります。
ロシアのオペラ
★★★★★
チャイコフスキーは意外にも生涯に11もオペラを手がけています。特に有名なこのオペラはプーシキン作の作品ですばらしい作品です。
もともと、小劇場を考慮して作られた作品ですので、タティアナの手紙のシーンなどはDVDで見た方が良いと思います。劇場ではその細やかな表情は判らないでしょうね。
1994年にグラインドボーン・フェスティバル・オペラでのライブですが古さを感じさせぬすばらしいものです。新人には若手を多数多用していますが、その後有名になった歌手が多数出ています。(例を挙げると限りないので・・・)
オペラの時間は長時間を短縮した小時間(とは言っても約150分)で納められていますが、大作にふさわしい作品です。
チャイコフスキーらしい音楽はすばらしいものです。解説のBook付きということも合わせてお買い得な一作品だと思います。