知っているようで知られていない清水寺の魅力の全て
★★★★☆
清水寺は、京都で一番多くの観光客が訪れる有名観光寺院ですし、ガイドブックにも必ず紹介されているわけですが、その清水寺の成り立ちや素晴らしい文化財の数々などは意外と知られていません。そんな清水寺の魅力を写真と文章で紹介したもので、学術的にも美術的にも価値の高い出版物だと思います。
音羽の滝を越えて、子安塔から清水の舞台を眺める景観が好きです。春の桜も秋の紅葉も実に見事で、ここを見ずして清水を語るなかれ、と思うほど絶好の写真スポットです。その場所からの写真は、口絵に冬景色の清水寺全景が見開きで収められていました。四季を問わず美しい景観が広がっています。
国宝の本堂や重文の三重塔、仁王門、奥の院、子安塔など建造物にスポットライトがあたりますが、24頁以下の仏像も素晴らしいと思います。秘仏の十一面千手観世音菩薩立像を始め、金剛仁王(阿形・吽形)立像、阿弥陀如来座像などの仏様のお姿は神々しく感じました。清水寺参詣曼陀羅、清水寺境内図屏風など珍しい絵画も掲載してあります。本書の半分のページがカラー写真ですので、眺めて納得の内容でしょう。
執筆陣の顔ぶれも豪華でその道の第1人者が関わっています。
田辺聖子「巻頭エッセイ 清水寺―きよみずさんのこと」、清水寺貫主・北法相宗管長の森清範「現代へのメッセージ いつの時代にも清水観音」、高野澄「清水寺の歴史―南を去って北へゆけ」、村井康彦「田村麻呂とアテルイ―古代東北の英雄」、蔵田敏明「清水寺文学散歩」、狩野博幸「清水寺参詣曼荼羅」、日向進「清水寺本堂」、横山正幸「清水寺の文化財」。