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てのひらのメモ

価格: ¥1,600
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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考えさせられました! ★★★☆☆
夏樹 静子さんの作品は結構読んでいますが、この小説は今までの作品とは全く趣が違っていました。

小説と言うよりは裁判員制度のマニュアル本の様な内容です。

かなりわかりやすく描かれていて難しさはなかったです。

もし自分だったら有罪・無罪どちらを選ぶだろうかと考えさせられる本でした。

ただ小説として読んだ場合の面白さにはやや欠けている感じがしました。
裁判員制度スタートにぴったり ★★★★☆
裁判員制度がスターとして2例目の裁判が行われたが、まさにその裁判員制度の応答問題集のような内容の小説。

ご主人を交通事故の自損事故で亡くし、5才くらいの子供を一人で育てている広告製作会社のキャリアウーマンが、喘息気味の子供を家で寝かせたまま、仕事に戻った。いろんな事情があって家に帰るのが遅れたら、子供が喘息の発作を起こして死んでいた…という事件。

これが、保護責任者遺棄致死に当たるとして訴えられた裁判を、裁判員に選ばれた主婦の視点で書かれている。

これだけ書けば、母親に意識的に子供を放置して殺したとは思えないので、私も無罪だと思ったが、裁判の課程で色々な新事実が明らかになり、裁判官 3名と裁判員6名との多数決で決まる有罪か無罪か、有罪なら刑期は何年か、執行猶予はつくのか…と言う問題が切実に押し迫ってくる。

しかも裁判の途中で、今まで誰も知らなかった驚愕の事実が検察側から示され、形勢が一気に逆転…と言うわけではなく、ますます有罪か無罪かの判断が難しくなる。

母子家庭で生きていくために育児と仕事を両立しなければならない社会環境、その母親の持つ人並み以上のキャリア志向、亡くなった父親の母との固執、近所の人の目、再婚を夢見ていた相手の不誠実な態度などがどんどん出てきて、裁判の最後で一つのキーワードになる

「抹茶のアイスクリーム」。

ここでは思わず涙ぐんでしまう人もいるに違いない。

さて、この女性は有罪か無罪か。結果は自分で読んでください(笑)

しかしこの小説は、現実よりリアルに書かれているのでは…と思ってしまいそうなくらいよく書かれています。相当取材などをされたのでしょう。

小説でこれだけ悩むとしたら、実際の裁判員になったら本当に苦しむと思う。一目瞭然わかるような犯罪なら別だが、このような微妙な事件の場合はなおさらだ。

この「てのひらのメモ」というタイトルが何を意味しているのかが微妙…。
Drills for Lay Judge System として活用。 ★★★★★
2009年8月6日東京地裁において、全国初の裁判員裁判で懲役15年(求刑懲役16年)の実刑判決が出た。いよいよ始まったという思いと、将来的にいつか参加する為にも今の内に参考にしようと、これまでも解説書や裁判員制度小説を何冊も読んだ。本書は東京地裁の4016号法廷、仲里裁判長以下裁判官3名と裁判員6名(女性は30代、40代、男性は青年、中年、60歳前後、70歳年配)と補充裁判員が主役の折川福実。罪名・罰条は、保護責任者遺棄致死、刑法第219条だ。被告は6歳の母親の種本千晶。3日間の審理・評議の予定が4日間に延び、裁判員1名が最終日離脱、補充裁判員が入り、その展開には自分が7人目の裁判員となったつもりで引き込まれた。特に最終日の有罪か無罪かの評議、量刑の評議には「自分ならどうする」と真面目に考えた。裁判員になれば未知数の中で判断を下す宿命であり厳しいが、そこはやはり常識と市民感覚を十二分に活かして考えたい。無理せず「わからない」でもいいのだ。本事件は年間10件程度しかない保護者責任者遺棄致死事件だ。年間1000件の強盗致傷事件とは違って、比較においても量刑のバランス感覚が難しい。正直そう感じたが、本書を読み大変参考にはなった。制度では対象事件の7割は3日以内としているが、長引く裁判では交代も含めて負担であることは間違いない。尚、裁判員制度の是非については様々な意見百出の状態ではあるが、私は裁判員候補に抽出されれば義務として参加する。そこで最終的に裁判員に選ばれれば忌避などせずに、恥ずかしくない裁判員として活動する。今回初の大役を務めた裁判員の方々のように。
いよいよスタート ★★☆☆☆
いよいよ裁判員制度が始まりましたね。
裁判員制度というと、夏樹さんのコメントをよく見かけます。
司法については、以前からかなり詳しく調べられ、ご自身、最高裁の諮問委員に任命されたり、模擬裁判での裁判員をされたりしているんで、じつに臨場感あふれる作品に仕上がっています。

「補充裁判員」というスペアがいることや、日本にも戦前には陪審制度があったとか、
法廷の中のことは一切口外してはいけない、と思っていましたが、裁判そのものは公開されているので法廷内で語られた内容は話してもかまわないとか。(但し、評議内容を口外するのはダメです)
お昼は外に食べに出ても、会社に戻っても構わないとか。

とにかく知らなかったことがいっぱい。
へ〜そうなんだ…、といった感じで早わかりマニュアルのような感じ。

思っていたよりも、縛りはないのだな…と思いました。
ただ夏樹さんは、もっと軽い気持ちで裁判員に…とおっしゃっていますが、やはり私自身は気が重いです。

裁判長を含め裁判官3人と裁判員6人、全て平等な一票になる。
人が人を裁く難しさ…。

裁判員制度、問題は山積みだと思います。
やはりブログや2chで評議内容などなどをアップしてしまう方もいるだろうし、そのせいで、裁判員の身元が明らかになり、いやがらせや票を買うような買収…なんてことにもなりそうな気がします。

それでも走り出した裁判員制度、方向修正しながら走って行くのでしょうね。
裁判員制度について、わかりやすく書かれています。
裁判員制度を擁護・推進するためのプロパガンダ ★★☆☆☆
この作家の本は初めて読んだ。

NHKの『クローズアップ現代』という番組で、裁判員制度を取り上げた際に、この作家が出演していて、驚くような発言を繰り返したので、いったいこの人はどういう人なんだろうと思ってさっそく本書を買った。

一読して感じたのは、やはり番組を観たときと同じ、「裁判員制度普及のためのプロパガンダ」に違いないという感触である。

主人公の福実(57歳、専業主婦)は、自宅に送られてきた東京地裁からの大きな封筒を、さしたる疑問もなく開封し、「簡単な」調査票に答え、「とりあえず」返送する。数ヵ月後に候補者名簿のなかから無作為に抽出した結果、裁判員候補に選ばれたので東京地裁に出頭しろとの通知を受け取る。辞退できる理由が10くらい書いてあるが(具体的には本のなかには列挙されていない)、「どれにもあてはまらないので」夫に相談すると、「案外向いているかもしれないよ、君はなんにでも興味を持つほうだから」との答え。「呼出状」を受け取ったまま行かないのは「気がとがめる」し、持ち前の「好奇心」も働いて、福実は地裁まで出かける。

この一連の流れの中に、この福実というオンナは一度も逡巡しない。
疑問を抱かない。
夫はギリシア哲学を専門とする大学教授であるが、夫との間にも「哲学的な会話」のひとつもない。そう、作者がまさに、テレビ出演した際に力説したように、「自分は人を裁けるか」などという質問をする必要はないのだろう。

巷の裁判員制度反対論者が指摘する制度の不備については、それを擁護する側からことこまかく補足説明がくだされ、疑問や反発を感じる国民の目をごまかそうとする書物としか思えない。
まるで、「新しい制度についての模範ビデオ」を見せられているように、ストーリーは進む。
「疑わしきは被告人の利益に」「守秘義務について」「有罪を立証する責任は検察にある」等等、無知な国民を啓蒙してくれることこのうえない。

登場人物は紋切り型で、その描写もお粗末。「まだ30代と見える可憐な感じのOL風」「ダークグリーンのコーデュロイのジャケットを着たどこか自由業風の中年男性」「鼈甲縁の眼鏡をかけ、恰幅のいい体に濃紺のダブルスーツとブランドものらしいネクタイ。企業の管理職か、もっと上の人かも……」

小説としてのできばえはさておき、裁判員制度がどんなにすばらしいものであるかを知りたい向きにはうってつけの教科書である。それにもちろん、プロの推理作家の作品であるから、部分的には「感動秘話」「意外な真実」もちりばめられている。裁判員制度などというあざといネタを盛り込まなければ、エンターテインメントとしては及第点だったろう。
そのあたりを勘案しても、「作家」と名乗る人間がここまで浅薄な問題意識のまま仕事をすること自体に、空恐ろしさを感じる。