篠原作品の読解に豊かな道筋をつける本
★★★★☆
多木浩二がこれまでに篠原一男について書いた文章と建築写真を集めたもの。八編の文章が収録されている。
多木浩二と篠原一男の関係は一般的な建築家と批評家のそれではない。私たちの多くは、この建築家の最良の作品群を常に多木の文章とカメラを通して理解していたような気がするからだ。改めて読んでみると、「異端の空間」と「美しい宣言」の二つの文章は建築作品の評論としても類まれな明晰さで、長い間読むことができなかったこの二編を収録していると言うだけで大変な意味がある。特に「異端の空間」は長い間の篠原ファンであった私のこれまで言葉にならなかった感動に言葉を与えてくれたような気がします。篠原一男はその影響力の割りに作品の分析や位置づけがまだ充分なされておらず、この本が端緒となって再評価の動きが出てきてくれると良いと思います。
■目次
・篠原一男を憶う 坂本一成氏によるインタビュー(雑誌「ka」より)
・異端の空間(「新建築」より)
・住宅と都市 篠原一男との対話(「4人のデザイナーとの対話」より)
・幾何学的想像力と繊細な精神(「perspecta no20」より)
エッセイ
・美しい宣言 デパートの中に建った2つの家(初出:Glass & Architecture)
・仮象性の主張(初出:インテリア)
・「意味」の空間(初出:新建築)
・ある建築の印象(初出:東京新聞)