ベニー・グッドマンは1930年代に一世を風靡したスウィング黄金時代の立役者。それだけにサッチモ同様、ジャズに限らず、あらゆる音楽ファンに知られている。ビートルズ出現以前のアメリカン・ポピュラー・ミュージックの世界では、キング・オブ・スウィングはイコール、ポップ・スターだったのである。本作は全盛期、30年代のビクター/ブルーバード録音からヒットチャート入りした人気曲をピックアップした精選集なので、いってみれば、グッドマン楽団の一倍おいしいところをギュッと圧縮した濃縮ジュースのようなベスト盤だ。
グッドマンはビッグ・バンドと並行して、スモール・コンボによる活動も盛んに行なったが、ここにはテディ・ウィルソンやジーン・クルーパらとのコンボ演奏も含まれている。ジャズの世界でクラリネットが花形楽器だったのはスウィング時代までのこと。そして本作には、クラリネット、グッドマン、スウィング・ジャズがもっとも輝いていた時代そのものが鮮やかに記録されている。スウィング・ジャズ入門者には、絶対おすすめのアルバム。(市川正二)