ギャラリーの先客の美人に片思いして妄想し、自ら「キモ
ーい」と突っ込みを入れたり、映画・歌人・漫画等もアン
テナにひっかかったものを紹介。
作者は優れた感覚を駆使して書く天才肌の人なのだろうと
感じていたが、それを活かすためにかなりロジカルに技法
を捉えていることもわかった。
「気持ちは多様なのに(同時に相反することを感じている
のに)態度は一種類しか選べなかったりする」と書く角田
光代の技法分析にからむ一篇には膝を打った(もちろん比
喩として)。
作者は「皆も弟子の名ぐらい考えておいたほうがいい」な
どと言うので、それではと考えてみたがろくなのものが浮
かばなかった(ワンダ古田とか)。
その提案に、作者の父も絶妙の弟子名を挙げるのだが(こ
れは本書を読んでのお楽しみ)、その場で考えたとしたら
本当に才能豊かでうらやましい。
一篇一篇はほど良い短さで、サクサク読めます。長嶋さんオススメの小説や映画、音楽がいっぱい紹介してあって「ぜひチェックしよう!」とファンならば嬉しくなるはず☆
あと「ジャージーの二人(三人)」「パラレル」の辺りの小説は、かなり長嶋さんの実体験に基づいて描かれたのだと知って感動!長嶋さんのダメっぷりを素直に告白したエッセイ集です。穂村弘さんのエッセイが好きな方には是非ともオススメです☆(長嶋さんも穂村さん、好きみたいです)
一番良かったのは、同じく芥川賞受賞の吉村萬一氏との往復エッセイ!長嶋ファン必読のエッセイです☆
エッセイは、それとは少し違って、下らないことを少しふざけて、かつ
ちょっと共感できるように分析して見ました。っていう感じなんです。
ちょっとクスって感じだけど、心に響くところがなくて氏の小説が好き
な人には不満が残ると思う。(ブルボン小林好きにはいいかも)
でも、小説の題名の由来や、バイトしていたパン屋での店主とその母
との忘年会(と言っていいものか・・、とにかく読んで)を描いた「二十
歳の年末」では小説のファンでも十分満足できる内容を見せてくれて
ます。
☆3つが妥当かと思うけど、惚れた弱みで☆4つ。
やっぱり小説が好きなら買ってほしいし、小説読んだことないなら、クス
って笑えるから買ってほしい。