稲川らしさはやや薄いものの今回も恐怖度は充実
★★★★☆
稲川淳二の怪談本「新すご〜く怖い話」シリーズ第7弾。掲載話は基本的に新ネタ中心だが一部は既出の話の再録で、しかも「なぜそんな地味な話を今になって」というような実に微妙なチョイス。今回気になったのは全体的な文体の変化。いわゆる三人称視点で書かれている話(箇所)が大半で、いつもの稲川独特の語り口調や稲川視点での臨場感などが再現されていない。そのため普段稲川の怪談本を読み慣れているなら若干違和感を覚えるとともに、稲川の著作特有の個性・世界観がやや薄まっているとの印象を持つだろう(ただし文章自体は読みやすいのでその点では特に問題なし)。前作「連れてけや」同様、人の温かさを感じさせる話やコミカルタッチな話は排除し、純粋に怖い話のみで勝負しており、話によって怖さにバラつきはあるものの、全体を通しての恐怖度は今回も高い。しかしシリーズ通して見た場合、安定してはいるものの従来よりややインパクトが薄い感もあり、また文体の変化もマイナスに作用しているとの印象。怪談本としては水準に達しており、怪談好きなら普通に楽しめる内容といえるだろう。