インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

北朝鮮「虚構の経済」 (集英社新書)

価格: ¥714
カテゴリ: 新書
ブランド: 集英社
Amazon.co.jpで確認
主体とは名ばかりの援助付けの経済運営 ★★★★☆
北朝鮮はソ連式の計画経済を模範として、朝鮮戦争後の1954年に策定された3カ年計画を始めとする合計で6回にわたり長期経済計画が作成され、計画経済運営がなされてきた。しかし、千里馬運動、三大革命小組運動など政治思想運動に依存した計画の超過達成、繰り上げ達成など、無計画な経済運営がなされ、朝鮮戦争後の復興期をのぞき、計画に沿った経済運営が行われなかった。その結果不足する資源は中ソからの援助に頼る、主体・自立とは裏腹の経済運営がなされてきた。90年代に入り共産圏の崩壊後、援助が期待できなくなると、北朝鮮の経済は完全に破綻する。長期経済計画は93年以後策定されず、数十万の餓死者を出した食糧危機を経た、99年の国家予算額は93年の半分に縮小したと分析している。
 今後の経済運営ついては著者はどう見ているのか。中国はベトナムのような経済改革の比較した北朝鮮の状況を分析した上で、北朝鮮の経済が根本的に回復する可能性は現状ではないと分析している。
 個々については様々な文献で論じられてきたが、建国後の北朝鮮の経済運営の歴史と、特に90年代以後の現状を一貫し見渡すことのできる貴重な文献である。
情報のない北朝鮮の経済を描く貴重な労作 ★★★★★
核問題で注目を集める北朝鮮の経済は、崩壊状態にあると言われている。実態はどうなのか。

本書によれば、北朝鮮経は農業を受け持った韓国なしでスタートし、さらに朝鮮戦争で国土が荒廃。朝鮮戦争後しばらくはソ連・中国の援助で経済建設を行ったが、スターリン批判による中ソ対立で援助も不安定な状態が続いた。韓国との対峙による軍事優先路線、そして重工業偏重路線が正常な経済運営を妨げた。更に無理な計画繰上げ達成・超過達成運動が、それに輪を掛けた。90年代の冷戦構造崩壊後、北朝鮮の重要性が低下した結果、中ソからの援助が激減。90年代後半には、大水害、干害が多発し大打撃を受けた。また、悪しき平等主義を改めるべく行われた「措置」は、手当ての順番を無視した改革により、ハイパーインフレと所得格差を逆に拡大した。兎に角、生産力を増加しようにも資本不足でエネルギーの輸入が出来ず、現状はまさに、不足の経済が相互にマイナスに働いて悪循環から抜き出せず、根本解決の兆しは無いと言う。

著者は又、日本との貿易額がせいぜい1割程度であることから、日本による経済封鎖はさほどの効果を生まないとしている。これが中国、韓国による協力が大事である理由だ。

この悲惨な経済が麻薬・偽ドル・偽タバコ輸出や、なりふり構わない瀬戸際外交、核開発を生んだ背景なのだろう。やはり経済から北朝鮮が判るというのは本当だ。

公開情報が少ない北朝鮮経済を記した本は貴重だ。また少ない情報を丹念に拾い、判りやすく北朝鮮経済を描き出している。貴重で労作といえる一冊だと思う。
現在と過去で一貫して続く、北朝鮮体制の悪癖 ★★★★★
世界中が援助物資を施してもガタガタの経済を回復できず、WFPから露骨に非難された北朝鮮。この国を形容する言葉は色々あります。「世界最後のスターリン国家」「赤い封建制国家」「テロ国家」「収容所国家」「物乞い国家」等等。しかし「地上の楽園」と呼ぶ人はさすがにいません。もはやタチの悪い冗談にしか聞こえないでしょう。
一時期礼賛された国の経済が、どのように破綻したのか。第1章と第3章では、建国以来の経済史から、北朝鮮の悪しき体質が読み取れます。千里馬運動に見られる精神一辺倒主義、GNPの3割を占める軍事費、中ソへの過度な援助依存。これらの悪癖全ての噴出で生じた90年代の飢餓は、間違いなく人災であることを再確認できます。
しかし北朝鮮の経済史を記した著書は他にもありますが、本書の売りは第2章と第4章。農業・工業面の生産回復を無視した価格改革の先行、情報流入を恐れる故の外資導入への消極性、70年代から続く金正日体制下の「速度戦」など、中国・ベトナムとの比較を元に、現在・過去の北朝鮮の類似点を鋭く分析する視点はさすがだと思います。
中国の改革開放路線導入における、鄧小平の言葉を思い出しました。「中国は経済面の立ち遅れを認めねばなりません。不美人が美人だと言い張っても何の得にもなりません」。しかし北朝鮮には同様の決断はできません。鄧小平流に言えば、本来なら北朝鮮は超ドブスなのに、自分は絶世の美女だと国内外に宣伝し続けた訳ですから。
「経済改革」以降、北朝鮮の「市場化」を唱える論調が日本や韓国で増えていますが、彼らには根本的な視点が欠落しています。情報鎖国体質や精神一辺倒主義に見られる悪癖を、建国以来全く改めない国で、前向きな変化が起こり得るかと言う点です。北朝鮮寄りの安直な幻想を払拭する上で、本書の丁寧な分析は多くの示唆に富んでいます。
今の北朝鮮が見えない ★★★☆☆
北朝鮮経済が破綻した理由は本書を読むとよくわかる。しかし、改革に踏み切った今の北朝鮮の姿が見えてこない。著者によると、それは改革でないということになるのだけど、ちょっと切り捨て過ぎではと思う。改革に焦点を当てた河信基著「金正日の後継者は『在日』の息子―日本のメディアが報じない北朝鮮『高度成長』論」と対照的で、読み比べると面白い。どちらが正しいかは現実が判断するだろうけど、もう少し時間がかかる気がする。
一読にして北朝鮮経済政策を理解 ★★★★★
北朝鮮関連の書物は政治に重点を置いた書が多かったが、この書は題名通り北朝鮮の経済についての書である。

北朝鮮に関する経済資料が少ない、北朝鮮自身の発表の信憑度が低いという悪条件にもめげず、北朝鮮の経済についてその建国から現在まで、なぜ経済運営に失敗したかその経緯を論述し、その背景を考察している。
この書を読めば北朝鮮の経済史・経済政策の概略が一読にして理解出来ると言っても過言ではないだろう。

北朝鮮の凋落の原因は現状認識の不足であろう。
自国の置かれた状況、採るべき経済政策を科学的に分析・理解せず、支配者の思いこみや精神一辺倒主義で窮状を打破しようとすし、却って状況を悪化させる。特に国の根幹となる農業分野では惨憺たる状況である。既に抜け出せない隘路にはまった北朝鮮の打開策は新政権による旧政権の否定にしか見いだせないのであろうか。