事例は『ハリー・ポッターと賢者の石』、映画『アメリ』、藤圭子のデビュー曲、『なめらかプリン』など計11例。商品の直接的なパブリシティで成功したケースだけでなく、自らのテレビ出演で店の信頼度も高めた『監獄レストラン』の安田社長、ドラマ『ホテル』の撮影舞台に名乗りを上げて集客につなげたヒルトン東京ベイなどのケースも取り上げている。
企業側の仕掛けにマスコミや顧客がどのように動いたかを簡単な図にしており、どのタイミングでプレスリリースを打ったかなどがひと目でわかる。内容の大部分は、「仕掛け人」へのインタビューをもとに書きおこしており、各人が手掛けたリリースの内容や送り先の工夫、マスコミの人脈づくり、プレスリリースに「ストーリー」を盛り込むノウハウなどが学べる。
本書ではこのほかに、販促広報の4ステップ、自社媒体やホームページなどのメディア戦略、プレスリリースの書き方、「企画型プレスリリース」などを解説している。「全部無料」とはいうものの相当な労力を要したり、内容がともなわないものにマスコミもなびかないことが想像できたりして、著者が言うほど簡単にはいかないように思えるが、広告を打つ余裕のない企業にとっては、やはり耳よりのノウハウだろう。マスコミを意識することで、自社の商品やサービスを見つめ直す良い機会にもなるはずだ。(棚上 勉)