これはよくない。
★☆☆☆☆
法律学テキストの世界では、「共著には気をつけろ。」とよくいわれます。
有斐閣アルマシリーズは共著ながら丹念にまとめられた良書も多いのですが、
本書はよくない。まさに“共著の弊害”を正面から引き受けたような本です。
学説対立の特に激しい刑法において、学者9人が折り合いを付けることもなく、
自由に書いているので、何が言いたいのかまるでわからないです。
学説はもちろん、レベルの設定、文章の硬軟もバラバラです。
スペースが限られているのに話題の取捨選択がうまくいっていない部分が
非常に多いのが一番の欠点かもしれません。
本全体として読み手(多くは初級者)に理解させようという意図が全く感じられない
本といっても過言ではありません。
多少障害があっても、なぜ中森先生の単著にしなかったのか残念でならないです。
これを読むなら、板倉宏『刑法』(有斐閣プリマ)の方が断然オススメです。