「要求仕様」は成功するソフトウェアにとって必須である。要求仕様によって新システムに盛り込むべき機能をユーザーと開発者が互いに理解できるようになるからだ。カール・ウィーガーの『Software Requirements』(邦題:『ソフトウェア要求』)は、多数の「ベストプラクティス」やコツを元に、要求仕様の定義の仕方や要求仕様からいかに多くの情報を引き出すかについて述べている。本書はソフトウェアのプロジェクトマネージャや開発者にとって手放せない1冊となるだろう。
本書の標準的なアプローチは、ソフトウェア要求仕様を収集し、そして改良、実装、追跡をするために必要なプロジェクトマネジメント能力にとって不可欠なものである。全体は薬品追跡アプリケーションのケーススタディによってまとめられており、ユーザーと開発者がソフトウェアプロジェクトの最終目的について互いに誤解してしまう逸話から各章は始まる。ソフトウェアマネジメントに携わった経験がある人にとっては、これらの話に思い当たるところが多いはずだ。
ソフトウェア設計プロセスを改善することを願って本書は書かれており、顧客から良い設計のための情報を引き出すコツや、要求仕様からさまざまな設計ドキュメントを書く方法が記されている。豊富なドキュメントのテンプレートやサンプルは、多忙なソフトウェアマネージャーにとって非常に有益だ。
開発プロセス中の難所のやりとり、特にプロジェクトの進展に従って要求仕様が変わる場合や、さまざまなユーザーや利害関係者を満足させ続ける方法について述べている箇所は注目に値する。また、後半部分では今日入手できるソフトウェアマネジメントツールの一覧や、組織に適したツールの選択方法を示している。
著者の豊富な経験とソフトウェア工学の知見に基づき、むやみに専門用語を使わずに実践に即した要求仕様作りのガイドとなっている本書は、ソフトウェアプロジェクトをより効率的に進めるための力を与えてくれるだろう。(Richard Dragan, Amazon.com)
--このレビューは、同タイトルのハードカバーのレビューから転載されています。
網羅的良書
★★★★★
要求工学に関するトピックを網羅した良書で、これさえ読めば要求工学の知識は完璧と言えるでしょうが、問題は内容盛りだくさんなことで、なかなか全てをこなすことは難しいと思います。Part Iは必須でしょうが、Part IIからは、実際には拾い読みになるのではないでしょうか。
32ページに顧客と開発側が満たすべき10箇条がそれぞれ書かれていますが、著者が先ず言いたいことはここでしょう。この20箇条が満たされるのであれば、その後はかなりうまくいくと思います。でも、実際にはなかなか...
本書は厚すぎる、と思われる方には、同様の内容でよりコンパクトの、"The Software Requirements Memory Jogger"という小さな書物があります。Ellen Gottesdienerが著者です。
順を追って読む必要がある
★★★☆☆
確かに網羅的に説明してあるのですが、実際に、この場合は
どうすればいいのか? を探して使うという利用法には向いて
いないようです。
要求をとらえる方法がここにある
★★★★★
ソフトウエア開発に最も重要なのが、要求をとらえる(見いだす・理解する・構築する)こと。この本は、そのことを再任し視させてくれるし、要求をとらえ文書化するための様々なテクニックを網羅すると共に、関連づけ、使えるように手助けをしてくれる。ユーザに近い位置にいる人もそうでない人も、ソフトウエアは何のために作るのかを、日々確認するために、一度読んでおく方がいい。動かない(動かす価値のない)コンピュータシステムを再生産することのないように。
要求工学の基本や規格に忠実で入門書に最適
★★★★★
要求工学の基本やIEEEなどの規格に忠実に、"要求とは?"から始まり、要求の引き出し、要求分析、SRS(要求仕様)のまとめ方、要求管理まで
じつに網羅的に、著者の経験談も交えて丁寧に解説されており、米国での評判に納得しました。翻訳も一般的な訳語(でもJISの訳語とはかなり違う)、"ですます調"で、良いと思いました。書籍の性格上、特に要求プロセスについて何か著者独特のものが示されているわけではありませんが、まず基本的な知識をと思っている方には最適だと思います。要求プロセスで何か読んでみたい場合は、ロバートソン夫妻の「要件プロセス完全修得法」(三元社 ISBN 488303111X )が良いと思います。(有名で本書でも参考文献になってます。ただし日本版は翻訳が悪い)
要求定義で何をすべきか?
★★★★☆
文章表現が若干堅苦しく、少し読むのに疲れるものの、記載されている内容は非常に素晴らしい。
何が素晴らしいかと言うと、SI会社やコンピュータメーカー等のSEやSAが、要求定義段階で見落としがちだが、本来やるべきことが明確に書かれており、要求定義の重要性を述べるだけのつまらない本ではない。
実践に応用する(実案件に置き換える)ことこそ必要なものの本質的に決めておかなければならないアイテムを述べ、なぜ必要かを説いている。
プロジェクトの成否に関わる重要だが、軽く見られがちな要求定義におけるSEやSAのバイブルとなりうる本であると思う。