意外と深い
★★★★★
ポール・ブレイは、間の感覚を生かした日本人好みのピアニストだが、ここではいつものプレイを控え、流麗に弾いている。不協和音を多用した曲でも、かなり楽しそうに指を動かしているところを見ると、このジャズ史的に見ても不思議な位置を占めるピアニストは、ラグタイムの心得が在るのではないか。つまり、ポール・ブレイのあの独特の間はシンコペーションの延長線上にあるのではないか?ルバートをよしとするジャズ特有のルーズさがヨーロッパ音楽には無いブレの感情を生み、音響学的な、ノイズ的な、こぶし的な音楽を育ててきたとすれば、ポール・ブレイはその徒花である。なぜなら、彼はピアニストだからだ。ポールが一時期不用意にフリージャズに近づいたのは、ピアノの持つ制約からであった。このアルバムでは、意識的にスタンダードメロディを借用しているように見える。ある意味、マイ・スタンダードのソロアルバム版ともいえるこのアルバムで、ジャズ・ピアニスト、ポール・ブレイは熟成された、と見る。