全体的に聴いてみると、ようやく彼女自身のバラードの熟成を成し遂げたように思える。歌唱力については、元々声量が豊富なので、控えめな歌でもしっかりした声で聴こえてくる。実力に裏付けられた余裕というものだ。
このアルバムの魅力はそれだけではない。実はこのアルバム、HDCDレコーディングが施されている。私は彼女の楽曲をHDCDかアナログレコードで聴きたいと常々思っていた。彼女の美しい歌声は、単なるCDフォーマットのみでは表現しきれないと思ったからだ。(HDCDは通常のCDと互換性があるため、HDCDデコーダー未搭載のCDプレーヤーでも問題なく聴けるが、音声は通常フォーマットとなる)
このおかげで、彼女の歌声の瑞々しさが益々増し、息継ぎさえも鮮明に聞こえるようになった。更に、バーチャルサウンドを殆ど使用しない演奏の解像度が明確となり、声については、マイクに対してどのような角度で歌っているのかさえも感じ取れるようになった。
2年ぶりのオリジナルアルバムということもあり、ファンとしては嬉しさも倍増。因みにHDCDであることは、ジャケットにもCD本体にも記載されていない。
哀しくもあり、優しくもある彼女の熟成したバラードが、今まで以上に両高音質で聴くことができ、本当に嬉しい限りだ。今後リリースされるアルバムも、HDCDで製造して頂きたいものだ。