インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

事象そのものへ![新装復刊]

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: トランスビュー
Amazon.co.jpで確認
もとより書くこと考えることなど、生の余剰でしかないのだから。 ★★★★★
本書あとがきで池田さんはそう述べる。まっとうなことをまっとうなことばで、真っ正直に語りたかった、とも。そして自らの試みを学術用語で言い換えると、”世界に生起する諸事象を普遍的意識による個別的現象形態として認識し、それら全事象の存在論の、詩的言語による体系化の試み”となると述べられている。ここで気が付いた。池田さんが文章を綴る感覚は、詩を書いている、という感覚なのだと。砂漠に消えたランボーのような。自身が詩人でもある大峯顕氏との対談にて”この人は本質的に詩人じゃないか”と指摘されてもいるではないか。
そして小林秀雄が自分の仕事を述べた「常識の深化」こそ哲学の発生するところだという気づきからアプローチする、本書末尾の「禅についての禅的考察」は又、禅的考え方への最高の道しるべだ。宝石の原石のような20代の池田さんの言葉が、確かな手応えでもってここにある。
彼女が書くべきことが全部書かれている(但し20代の段階で) ★★★★★
30歳の時に書いたあとがきで、「当初の予定では、一気呵成に書き上げて、あとは砂漠に消えてしまうつもりだったのに」とある。

序と第二編については、「うさばらし」と謙遜しているが、序と第二編を「うさばらし」と卑下できる程に、本編はすばらしいといっているのだと思う。(序は、当時の彼女の文章を読むであろう、当時の限定された人たち向けであるので、今の人にとっての意味は小さく、読み飛ばしても可である。が、彼女の自己紹介でもあるので、最後には一読されたい。第二編は女性についてと禅についての論ふたつ)

一気呵成に書き上げるつもりが、5年かかっているが、5年分の仕事は、本編には詰まっている。

中身は難しいが、後年わかりやすさを第一にして書いている著作と違って、20代での全力を注いで、書きたいことをというか、書くべきことを書いてある。これを書いたらもう思い残すことは無いってことを書いている。

そういう意味では難解であるが、書くべきことだけを書いているという点ではわかりやすい。

本編は5つからなる。私流の言葉で言うと次の5つである。
「存在」「意味が伝わるということ」「物質宇宙」「個人」「個人を導くもの(神)」

名言も数々ある。

この世には人間しかいない。
思考によって思考について思考する。あるいは、意味によって意味について意味させる。
つぶやかれないつぶやきで、宇宙は充ちているだろう。等々

一冊で彼女の全部を知ろうとするには、いい本である。そして、知ることができるのは、若さに溢れた20代の彼女である。
遅かりし対話 ★★★★★
この書物には、ヘーゲル、小林秀雄、禅、あるいは、脳科学の知識等、
池田晶子が池田晶子なりに得たであろうエッセンスを散りばめながら、
池田晶子からの存在理由を語っている。
しかし、その語りは、明確でありながら曖昧であり、簡潔ながらも複雑であり、
渾然一体となった秩序と混沌になっている。

人間が生きている以上、なぜ、という問い掛けは、永遠に続く。
それは、死すべき宿命を担った肉体を伴いながら、発せられていく。
無限は有限、宇宙は人間、神は私、そのまた逆も然り。
ほんの些細な出来事や当たり前のことに、時に深い不可思議と感動を
覚えるのも、そういうことからかもしれない。

「なぜ空は青い?」
「青いから」

この答えに辿り着く道程は、それぞれで異なると思う。

残念ながら池田晶子は、もうこの世にはいない。
しかし、こんなことに思いを巡らせてくれる書物が、
この、「事象そのものへ!」、である。