昭和天皇は、戦争とどう向き合ったのか
★★★★☆
いわゆる「昭和天皇独白録」とは、1946(昭和21)年4月から6月にかけ、松平慶民宮内大臣・松平康昌宗秩寮総裁・木下道雄侍従次長・稲田周一内記部長・寺崎英成御用掛の5人が、張作霖爆殺事件から終戦までの経緯を4日間計5回にわたって昭和天皇から直々に聞き、まとめたものである。
本作は、1997(平成9)年6月15日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「昭和天皇 二つの『独白録』」をDVD化したものであり、英語版の「独白録」の発見から極東国際軍事裁判の舞台裏で行われた聞き取り作業の真相に迫ったものである。
私が注目したいのは、いわゆる「昭和天皇独白録」としてまとめられた5回の聞き取り以後も、木下と稲田の2人によって2ヶ月半にわたって聞き取り作業が続けられ、1946(昭和21)年10月1日に昭和天皇に奉呈されたとされる「聖断拝聴録」と呼ばれる記録である。
宮内庁は「聖断拝聴録」の存在すら「不明」としているが、木下の残した記録の断片と見られる文書で昭和天皇は「軍備が充実すると使用したがる軍人の癖」と「軍部の主戦論に附和雷同した日本人の国民性」が戦争防止を困難にしたという鋭い指摘もしている。昭和史の第一級史料として公開が待たれてやまない。