ぎりぎりの戦争の現場とそれを回想する現代の生存者、微妙にからんだ時間軸、ときどきリフレインされる思い出話。すべてが語気やわらかく淡々と語られる。そこには明確な反戦や、懐古趣味はない。思い出にとまどう、過去の意味づけや否定もできない経験、それが淡々と語られる。
古山自身のあとがきが彼の思いをもっともよく表現している-「戦争とは何であったか?国とは何か?私は、そういう問いにはうまく答えられない。しかし、そういうことに答えることができる気でいる人、私と同じように答えられないと思っている人、そういうことに関心もない人にも、ひとしく親しんで生きていきたい。」-短いがあとがきの傑作だ。心にしみた。