隅々まで遊び心いっぱい。
★★★★★
絵本の楽しい機能をなんて存分に活かした絵本でしょう。
文の発想は絵がなくても成立するものですが、絵がないとおもしろさは百減してしまいます。
どこにでもある女の子とその家族が左ページ。どこにでも住む女の子ネズミとその家族が右ページ。両者の窓となるのが床辺りに空いた穴。偶然一人と一匹は顔を見合わせることとなり、意識し合います。
時は流れ、女の子は大人になり家を出て行き、ネズミの女の子も家を出て行きます。
また時は流れ、女の子には娘が生まれ、ネズミの女の子にも娘が生まれ・・・・・・。
バーバラ・マクリントックの絵は、五〇年代アメリカイラストの香りを漂わせつつ、友達と時間について、語っていきます。隅々まで遊び心いっぱい。楽しいですぞ。(ひこ・田中)
生物的・空間的・時間的、相似形物語
★★★★★
マリーの住む大きな家のすみっこに、ネズミの住む小さな家がある。
なんと家族構成、部屋の様子が瓜二つ。そればかりでなく行動まで
もがそっくりなのだ。例えば、マリーが学校へ行っているときは、
娘ネズミも学校へ行き、絵をかいたり、読書したり、歌ったりと
同じことをしているのである。全く同じ生活をしている者同士が
身近にいながら、お互い気づいてないという奇跡的な状況を
読者はしばしの間、楽しむことになる。
あり得ない話にリアリティをあたえてくれたバーバラ・マクリントックの
雰囲気あふれる絵もみどころ。ネズミ家のソファーが卵ケースや
ティーバッグで作られていたり、糸巻きのスツールがあったりと、
本当にうまく考えたものである。
彼女たちは、ふとした偶然から出会いながらも、やがて別れてしまう。
しかし、それだけでは終わらない。もうひとつの運命的奇蹟が
まっているのです。離れていても通じ合う心っていいですね。