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楢山節考 (新潮文庫)

価格: ¥452
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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心の奥底 ★★★★★
ひとが、ひとの心の奥底をのぞく事はできない。
覗き込む事はできない。
現代にも生きる村民像 ★★★★☆
山村はそれほど貧しいだろうか。山の幸、川の恵みは利用にあり余るだろう。この山里にはまだ藩の収奪が及んでいないようだから、村民の連帯があれば富の増加は可能である。
 しかし人々は実に無気力である。代々伝わる親殺しの呪縛が村民の生の連帯を奪っているのだ。若いけさ吉夫婦に見られるような、一見反抗的だが、結局は古習を補強しているに過ぎない享楽的な態度が、村人全体を覆う未来の持てない感情を代弁している。辰平はそのうえ母べったりの柔弱者で、家長として落第である。
 年寄りの模範として振る舞うおりんが、心の奥底では姨捨を容認していないことが、祭りの日の本人も意図しない妖気迫る行動となる。だがおりんの最後の理性は、辰兵に元気な自分を捨てさせ、マザコンを脱皮させる試みに収束する。この実地教育は少し成功する。辰平が掟を破り、自分の意志で母に話しかけたのだ。しかし辰平がこの経験から男になり、村民を束ねて悪習を絶ち、村の再生を図れるかどうかはなお定かでない。理由もない因習と停滞社会を描くこの物語は、現在もなお有効である。
名作。ページ数も少ないので是非読むべし。 ★★★★★
わずか60ページの物語なのに、物凄く深い余韻が胸に残る。本当に読んでよかった。この小説のテーマを「姥捨て」と整理するのはあまりに単純。いろいろな読み方がある。死に臨む姿勢、老母と息子の愛情、村の風習、家族とは、隣人とはなどなど。ページをめくるごとに物語の襞に分け入る。描写がとても丁寧。これが日本の山村の原風景、食料に餓えた時代の暮らしなのかとも思った。
題材は素晴らしいが小説としては凡作 ★★★☆☆
 姥捨山伝説を題材に選んだ着眼点は素晴らしいと思いますが、小説としてみた場合はやや物足りなさを感じました。情景描写も、心理描写も、文章も、プロの小説家としては稚拙なのではと・・・。
 その他に気になったのは、小説の内容が「実話」と解釈されかねない危険性です。姥捨山伝説にヒントを得たにせよ、小説の内容は深沢氏の創作のはず。また、小説の中に出て来る数々の歌も深沢氏の創作のはずです。しかし、読み方によっては、日本のどこかで実際に起こったこと、日本のどこかに伝わる民謡のように見えてしまわないでしょうか。ある程度近い事例は日本のどこかであったかもしれませんが、この小説はあくまでもフィクションのはずです。その点を冒頭で強調した方が良いと思いました。
 ほとんどの方が絶賛されている中でこんなことを書くと顰蹙を買いそうですが、あえて違った観点のレビューを書いてみました。
地球が養える人口を超える日 ★★★★★
齢40を過ぎ、息子の立場でも、親の立場としても読めた。
感動というものは無かったが、地球の資源に限りがある中で、増加をつづける世界の人口、
どの国も経験した事の無いスピードで、高齢化していく日本、を思うと、次の世代に迷惑を掛けようとしないおりんの背筋の通った身の処し方に賛同した。
しかし、勿論、自分の親を捨てる事などできない。
この矛盾を抱えながら、これからもずっと皆が奪い合いをせずに暮らしていける社会は継続できるのだろうか。