正倉院の宝物をカラー写真と詳細な解説で紹介
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「平螺鈿背円鏡」を始め、その美しさに見とれる宝物をこれだけ掲載してある書籍も少ないと思います。実に貴重な出版でした。
232ページには、正倉院展で実物を観賞した「紫檀金鈿柄香炉」が掲載してありました。僧侶がお焼香をする際の仏具です。外面の象嵌が鮮やかで、この美しいフォルムは時代を超えて観る者を魅了します。水晶や象嵌の繊細な細工が施されている柄も美的感覚に優れており、端には可愛らしい金の獅子が印象的です。その年の正倉院展のチラシにも採用されている香炉との再会を果たせました。
楽器関係も135頁以下に見事な御物が並んでいます。「螺鈿紫檀五絃琵琶」の細工の美しさは格別です。写真でもその素晴らしさが伝わってきます。とても1200年以上を経過したとは思えない保存状況で驚きました。木村法光氏の解説に詳しくありますが、まさしく「滅多にお目にかかれない名品」でしょう。正倉院宝物の中でも特に人気のある品なのは当然だと感じました。
156ページの「新羅琴」という琴も美しい保存状態で残っていました。伽耶琴とも呼ばれているそうです。現在でも中国の琴は古筝といって日本の琴とは発達過程が違います。それのルーツを見るようでした。
チベット仏教でもよくみられる染織の幟も、保存状態の良さを示すように比較的彩色がよく残っておりこれまた貴重でしょう。「彩絵仏像幟」には菩薩像が数点描かれており、正倉院で唯一の絵を描いた幡だそうです。
316ページの「青斑石荘硯」の外観にも惹かれました。螺鈿やツゲの文様のはめ込みが細かく、今でも美術工芸品として活用できるような完成度を誇っていました。
何と言うべきか!
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この本は縁あって私の手元まで来てくれたと思っている。
またこの本を大切にしていてくださったようで綺麗でした。人柄がしのばれる。
なかなか正倉院まで行けないのでありがたい事です。今一度ありがとうを申し上げたい。
素晴らしいの一言。形容のしようが無いほど素晴らしい。
細やかで貝を大胆に配置している。この文様を繧繝彩色にしてみた。
大体の寸法を現物に合わせて下絵を製作してみた。
おおよそ直径が37cmになる。
彩色はなお難しく、寒色・暖色・中間色で朱を基本にしてみた。
出来上がりは専門の人には足元にも及ばないが、また意欲が沸いてきた。
まだまだ種類が有るので楽しみにしている。
本当に有難う。
カラー写真が満載
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ほとんどがカラー写真で、拡大写真も多いです。主要な宝物はほぼすべて網羅されているんじゃないでしょうか。
この本が面白いのは、研究員でしか知り得ない情報が満載だからです。
例えば、未使用のまま保管されていた合金製の食器(写真で見る限り現代でも使えそう)を包んでいた緩衝材は、隣国の役所で作成された帳簿の反故紙だったそうです。食器は新羅からの輸入品だったんですね。
また、正倉院に納められた生薬は許可を得れば取り出して使用することも可能だったそうですが、現代の市場でも最優良品(ちなみに現在でも薬効を失っていない)の大黄(主に下剤)は特によく消費されていたようです。
トリカブトより強い毒性を持つ薬物が、百年後には献納当初の十分の一になっていたと言うのは...。奈良〜平安初期は世情不安定でしたからね。研究員の方がおっしゃる通り、誰が何の目的で使ったのでしょうか。
服飾史や音楽、書に関心がある方にもおすすめの一冊です。
天平の奇跡
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今から30年近く前の高校3年生の時に
東京国立博物館『正倉院展』で初公開された
「螺鈿紫檀五弦琵琶」を観るためだけに2時間並んだ。
その後、この至宝はまったく公開されていないから
この時に現物を生で観ておいて
ホントに良かったと思う。
その時の感動を思い出させてくれる1冊。
まさに「天平の奇跡」である。