第一部では、二足歩行をするサルとしてチンパンジーと袂を分かってから、現在のヒトに至るまでの進化の過程をたどり、最も決定的な変化は言語の獲得であると結論している。
しかし、ヒトとサルの違いはそれだけではない。第二部では、他の類人猿とヒトのライフサイクルの違い(性行動の違いや、長い寿命、閉経など)に焦点をあて、それらが何故進化してきたのかを考察する。
第三部では、人間特有と考えられてきた行動(言語、芸術、農業、薬物中毒、殺人など)には、自然界に他に先駆者がいることを示し、その種がどのようにその行動を進化させてきたかを考察することで、ヒトにそれらの行為が発達してきた理由とヒトでの特異性について明らかにしようとしている。
第四部では、ヒトの征服と被征服の歴史を振り返る(この部分を更に発展させた内容なのが「Guns, Germs, and Steel」である)。
第五部は、過去、ヒトの版図拡大の往く先々で起こった種の絶滅から、今現在、かってないスピードで進行する種の絶滅までを語り、人類の未来に対し警鐘をならす。
一部から三部までが生物学的な視点から、ヒトの特徴や行動を説明してゆくのに対して、四部と五部では歴史的アプローチから、ヒトとはいかなる生き物なのかを浮き彫りにしています。
作者の人類の未来に対する見方は基本的には悲観的なようですが、歴史から学ぶことで、未来の悲劇を回避できる筈だと締めくくっています。