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月山・鳥海山 (文春文庫 も 2-1)

価格: ¥610
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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雪に閉ざされた山深い村で見てしまった輪廻転生 ★★★★★
この雪深い月山に抱かれた村、七五三掛で、
森敦は、ひと冬の間に輪廻転生を見た。

描かれる情景は、比喩も、現象も含めて、すべてが生老病死を描いているようで、
おろそかに読み飛ばすことができない。時々頁から目を離し考える。
生(ばさまの卑猥な歌、若後家の性的な誘い、祭り、ゴムひもや歯ブラシの押し売り
  狂ったようにさかりのつく雌牛、密造酒づくり)
老(足の萎えた寺のじさま、毎日割り箸をつくるじさま)
病(甘酸っぱいいとこ煮、狂ったようにさかりのつく雌牛)
死(天の夢を見る蚕、行き倒れのミイラ)
 
先ず、「生きる」を語る描写が多いことに気づく。
 
中で、月山はなんの比喩なのか、それともそこにあるという現実なのか。

森敦は、何度かででくる月山を、同じ言葉で形容する。
それはおそらく、ある意図があってのことだろう。
「臥した牛のような月山」
レトリックなら、違う形容にした方が良さそなものなのに
何度出てきても
「臥した牛のような月山」
しかも月山に触れるときは、もう形容は必要ないと思われるのに
「臥した牛のような月山」

月山は変わらないものを象徴しているのである。
それは「死」であろう。
 
作品の冒頭に掲げられる論語

 未だ生を知らず
 焉ぞ死を知らん


私なら拙いがこう、訳そう。

「死(す)んでもどうなっが、わがんねべ、ンだがら、とりあえず生ぎてみっべ」

主人公はひと冬を輪廻転生の村で暮らし俗界に戻っていく。

俗界にいるぼくはたまらなくこの村に行ってみたくなる小説であ
幻想的な世界 ★★★★☆
山形県庄内地区旧朝日村の四季とともに、幻想的な世界が広がる。その幻想は村の自然の移り変わりとともに幽玄さが増す。村人の性質や性格が自然と溶け合う。月山麓で繰り広げられる、土着な生活。
東北地区独特の粘着質のある世界観であります。寺山修二の世界観に似ています。そして粘着と反するような哲学的な文章。ほんとうに不思議な世界観が紡ぎだされます。
山形県出身者および在住者は必読です。現在話題の山形県ロケ映画である、アカデミー外国語映画受賞作よりずっと東北の世界感を体験できます。
山の存在の大きさが印象深い ★★★☆☆
 山形弁で語る地元の人間がとても魅力だ。
 厳しい自然の中で代々暮らしてきて、学問や現代の文明生活とは離れてはいるのだが、そこには村という一種の社会が存在して、その中に歴史や自治政治、互助が存在している。そして、積み重ねた生活の中から出てくる言葉に、時としてはっとさせられる瞬間がある。山は無言のうちに住民の心に存在している。そこで生まれて、そこで死ぬ。それは目標であり、規準であり、親である。まさに「山懐に抱かれる」生活と言う印象だ。
芥川賞に引導を渡した歴史的作品の1つ ★★★★★
第70回、昭和48年下期の芥川賞受賞作品です。この作品と第74回の中上健次「岬」をもって、芥川賞はその歴史的使命を終えたのだと僕は思っています。

いや、それ以前にも芥川賞は実は見るべき作品は少ない。第59回の丸谷才一、第38回の開高健、第32回の小島信夫と庄野潤三(歴史に名を刻む回だ)、第31回の吉行淳之介、第28回の松本清張、第25回の安部公房、第6回の日野葦平、と、日本近現代文学史の稜線を、試みに引いてみて、これくらいだろうと独りごちてみる。好みが入っているのは認めるが、「月山」以後の稜線が弱いのは、どうしようもない。

そうして、好みの作家を並べて受賞作を思い浮かべてみても、「月山」は屹立している。それでいてその名のごとく山懐は深く、本然としてその姿を容易にはあらわさない。小島信夫さんの解説もまたすばらしい。

ちなみに、どこかで柄谷行人が森敦の「意味の変容」をほめていた。だからというわけではないが「意味の変容」は確かにすばらしい。けれど、柄谷先生も認めてくれると思うけれど、それを目の前に見せてくれた「月山」は、「意味の変容」よりももっとすばらしい。批評や評論と文学の関係はこうでなくてはならない。

こんな作品は、どうがんばっても、書けない。
生きる力が湧いてくる ★★★★★
某旅館で何の気なしに手にとって読み始め、虜になった本です。
注連掛の生活をまるで自分が体験しているような気分になりながら読みました。
最初はなんだか堅い話かと身構えていたのですが、読み終わりの感じは情景的で叙情的。。。
切なくも生きる力が湧いてくる、そんな話です。・・・私だけかな?
私はこの本を30歳を過ぎてから初めて読んだのですが、もっと若いころに読みたかったなぁ
と思いました。
絶版になったらもったいない名作だと思います。