『鍋の中』という本のことは、知っていたけれど、読んでいなかった。それが、ふっと出会ってしまった。引きずり込まれるように読んでしまった。たみちゃんという主人公の女の子の観察眼というか感性というか、それが、ごく普通っぽくていい。でも、それをこんな風に書く人はすごいと思う。
おばあさんは、記憶がとぎれとぎれで、自分でもそのことを気にしたりしているけれど、そこには、ごく普通の人が、ごく普通の人生を送って、ごく普通に老いていく姿が感じられる。
ごく普通のおばあさんと、ごく普通の子どもが、ごく普通に生きている一夏。それが、心にしみる。けなげさっていうのかな。
人って、いろんなことにいろんなふうに反応して生きているんだなあと思った。
著者の写真なんか見ちゃうと、なんとなく年配の方向けかななんて、私たち若年層は敬遠してしまいそうなものだけど、そこんとこだまされてやってください。むしろこれは若年層向けです。
中学生くらいで読むのが丁度いいんじゃなかな。。。なんて思いました。
ちなみに読み終わった本は妹にあげました。彼女はまだ小学生。
読んだのはもう随分前なのだけど、強く映像として記憶に残っているシーンがいくつもあるってやっぱりいい本の証拠だと思う。
解説にあるようなおもったいもんじゃないですよ。
もっと軽く読めるように作られてる。でも、考えさせられることはいっぱいです。
このすっとぼけたバーちゃがいい味出してる。まあだまされたとおもって途中で止めずに最後まで読んでよ、後半からよくなるから。
楽に読めるかな?と思って、手に取ったのが「鍋の中」です。芥川賞受賞作家であったとか、話のあらすじさえ知らず、買いました。ゆっくりゆっくりかみしめる様に読み、読後、とても心が豊かになりました。半年に一度、読んだ本は処分するのですが、この本だけは、毎回「やっぱり手元に置いておこう」と思い、処分することができません。決して派手さはありませんが、素晴らしい本です。