最良の語り手が最良の聞き手に出会って生まれた、とっておきの一冊。古今東西の文学を巡るお喋りはジャンル別に進み、その構成は、【短篇小説】【長篇小説】に始まって、【伝記・自伝】【歴史】【批評】【エッセイ】を経由し、【戯曲】【詩】で終わるというもの。そもそもこのような本を手にするようなタイプの読者は、学問的考察とよもやま話とが織り交ぜられながらの展開にその身をゆだね、時間を忘れながら知的快楽のひとときを味わうことになる。本書の持つ雰囲気は、【歴史】の章で言及されている、ピーター・ゲイという歴史家の見解に良く表れているであろう。すなわち、「一国の帝王なり宰相になって歴史を動かす立場よりも、彼らを材料にして歴史を書く人間の方が上だ、という考え方（笑）」（p.112）。なお、本文中に言及されている書物をまとめた巻末のリスト「文学のレッスン　読者案内」は有り難い。私は、今まで読んだことのある本にはチェック印を入れ、これから読みたい本には◎を記した。もちろん、楽しみながらである。