1999年、ブラック・サバスのオリジナルメンバーたちは、再びツアーを行なうことに決めた。どことなく微笑ましい出来事である。バンド内のギクシャクした人間関係は、ブラック・サバスの長いキャリアを特徴づけてきた要素であり、映画『スパイナル・タップ』の製作陣に大きなインスピレーションを与えた。それだけに、この再結成は『スパイナル・タップ』のラスト・シーンと被って見え、実に愉快だ。
   本作のコンサート映像は、上記ツアー中の6回のコンサートから選ばれている。オジー・オズボーン、トニー・アイオミ、ギーザー・バトラー、ビル・ワードというオリジナル・メンバー4人組（オズボーンに言わせれば「バーミンガム近郊の町アストンからやって来たボンクラ4人組」）は、50代前半にして若さいっぱいのロックン・ロール・バンドぶりを随所で見せており、まるでハイ・ティーンの頃に戻ったかのようだ。さらに、大まかなバイオグラフィ、そしてヘンリー・ロリンズのサバスへのインタビューも収録。ロリンズといえば、サバスの影響を受けた幾人ものミュージシャンのひとり。うまい起用だ。本作の唯一の欠点は、ロックン・ロール史に残る奇人オジーが、得意のグロテスクなパフォーマンスをまったく見せてくれないこと。にもかかわらず、その堂々たる存在感は、以前にも増して際立つばかりなのだ。（Andrew Mueller, Amazon.co.uk）