多次元方程式を読み解くために
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地球温暖化交渉はまさに多次元方程式。日米加を中心とするグループ、EU、ロシアと東欧、途上国、島嶼国、その他のグループと、ざっと挙げただけでも6つの勢力がそれぞれの利害を踏まえた主張を行っています。それらの主張は、どれも各国・各地域の抜き差しならぬ事情によるもの。どれ一つを軽視しても、交渉はまとまりません。
本書では、交渉に参加した環境省職員の方が、日本を含めた各グループの主張の変遷と経緯を丹念に記述しています。締約国会議に至る準備会合や予備交渉の経緯も漏らさず描写されています。ターニングポイントはどこか。誰のどの行動が妥結への足がかりになったか。米国離脱により各国の位置づけはどう変化したか。これらの問いが、丹念な事実描写により語られています。
時に扇情的な記述も混じるルポルタージュではなく、事実に語らせることを主眼においているので、一読して読みづらいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、交渉の現場とは、常に膨大で複雑な事実と難題が錯綜する、地道な作業の場だと言うことが実感できると思います。ですから、読みにくさを理由とした減点はあえてしておりません。
本書を読み、ありのままの国際交渉の現場を追体験しましょう。