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破獄 (新潮文庫)

価格: ¥662
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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評判通りかなり興味深く、面白い作品 ★★★★☆
 脱獄を繰り返した人のノンフィクション的な話です。全体的に淡々と話が進む中で、映像が浮かぶような現実感がありました。主人公のかなりスーパーマン的な人物でありながら、非常に人間味がある。でも、決して魅力的な人間ではありません。自首、逮捕、脱獄、逃亡を繰り返します。脱獄の手口はなるほどよく考えられた様々な手法があり、また著者の解説をする語り口も魅力的です。しかしながら、現代の科学的な刑務のもとではではおそらく不可能であろうと思います。
 単なる脱獄犯の話ではなく、著者はその時代に何か起こっていたかということを多く語っています。第二次世界大戦を交えた昭和の初期から戦後にかけての時代背景を織り込みながら、敗戦ムード漂う状況から米軍統治にいたった時期における刑務所、拘置所の状況も時代に揺れる様を表現し、看守の心理状況も伝えている。
 読後感が非常によかったです。
 
驚く目と時代を見る目 ★★★★★
 青森、秋田、網走、札幌。特に網走の刑務所は脱獄犯ゼロを誇っていました。にもかかわらず、主人公佐久間清太郎は脱獄し、しかも極寒の北海道でサバイバルを成し遂げます。
 佐久間の驚異的な知力と体力と胆力に読者は驚きます。この本の狙い目は第一にそこです。しかし作者吉村昭は、戦中戦後の日本がどういう状況だったか、特に佐久間と同じ囚人たちや、刑務所の看守たちに目をつけ、日本全体で彼らにどういう変化があったかを丹念に、しっかりした取材をもとに語ります。
 刑務所では囚人たちが栄養失調で死亡することも多く、戦後の混乱期には刑務所内部の反乱まで起こります。そんななか、佐久間は自分の人生の一番良い時期を脱獄に明け暮れた。最終的には、一生刑務所で過ごしてもおかしくないところを、鈴江所長の裁量で何とか出してもらえましたが。
 佐久間程の有能さがあれば、何かしら別の方向に人生を進めていれば何らかの功績をあげられたかもしれません。それを刑務所暮らしと破獄に費やしたのは、エネルギーの無駄遣いだったかもしれない。しかしそれを文学にしてしまえば、常人の想像を超えるものができる。その成果が、この本なのでしょう。
破ろうとする者と破られまいとする者の行き詰る攻防戦! ★★★☆☆
犯罪史上他に例のない4度の脱獄をやってのけた佐久間清太郎。
いったい彼はどのようにして脱獄することができたのか?
彼と看守たちとの攻防を描いた作品。

どんなに頑丈な手錠をかけ警備を厳重にしても、彼は脱獄する。
難攻不落と言われた網走刑務所からも、やすやすと逃げてしまう。
世の中に100%完璧なものなどない。99.9%完璧だとしても、
佐久間は残り0.1%の不完全さを見抜いてしまう。その彼の
洞察力や行動力、そして知恵には驚嘆させられた。破ろうとする者と
破られまいとする者の行き詰るような攻防戦は、読んでいてとても
面白かった。彼はこの先どうなるのか?彼の行く末が気になったが、
ラストの鈴江と佐久間の交流は、胸に迫るものがあった。実際に
起こったできごとをもとに書かれているだけあって、現実味あふれる
作品だった。
驚嘆の男 ★★★☆☆
個人的には吉村先生のドライで長大な本作よりMONSTERSの簡潔でウェットな白鳥への叙述に心惹かれるのですが・・

こんな男が居たということ、人間の恐るべき可能性を信じることができると思います・

教養もない小男が、世間を心胆寒からしめるその脱獄とは!?

長旅で一人になったときなどぴったりの一冊だと思います
現代の管理社会のストレスに通じる ★★★★★
青森、秋田、網走、札幌の各刑務所の脱獄に成功した主人公「佐久間清太郎」の頭脳と体力のすごさに驚かされた。このようなことは、映画の世界だけかと思っていたが実際にあったことだとということで、更に驚かされた。本作品を読むきっかけになったのは、12月末に寒冷の網走へと旅行に行った時に、網走監獄博物館を訪れて、本の主人公「佐久間清太郎」の話を聞いて興味をそそられたからである。脱獄を繰り返す主人公「佐久間清太郎」VS看守との戦い。心理作戦など見事に描かれている。単に脱獄の手段や経緯を綴った物ではなく、時代背景を織り交ぜて監獄の施設の状態や囚人の置かれた状況も知ることができる。また、主人公「佐久間清太郎」が最後に服役した府中刑務所で出会った所長の鈴江の民主的な心が通った処遇により主人公が変わる様子は、現代の管理社会でのストレスに何らかの通じるものがあるように思う。