たやすく手に入る今が読み時
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本書で、結城昌治こそ、わが国のハードボイルドの原点であることがわかる。
一人称視点からくる、ストーリーの強引さはやむをえないが、それを補って余りある出来である。
真木は、軽口をたたかない「沢崎」といえば現在のハードボイルド好きにわかってもらいやすいか。
40年前に書かれた作品とのことであるが、
ぜんぜんその古さを感じさせないところはすごい。
感じるとしても、ケータイのない不便さぐらいであり、
それは、ストーリーとは関係のないことである。
お薦めするのは、もちろんハードボイルド好きの方。
たやすく手に入る今が、読み時。
たとえ読まなくても、手に入れておきたい作品である。
開拓者としての結城昌治
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結城昌治は日本ミステリにおける偉大なパイオニアであり、その業績は再評価されなければならない。
日本版「EQMM」の短編コンテストで佳作入選し、洒落たユーモア・ミステリ「ひげのある男たち」で長編デビュー。
本邦初の本格的なスパイスリラー「ゴメスの名はゴメス」、悪徳警官ものの傑作「夜の終る時」(推理作家協会賞受賞作)、
渥美清主演で映画化もされた愉快なコンゲーム物「白昼堂々」とその多彩さと完成度の高さは驚きですらある。
そして私立探偵 真木(名は明らかにされない)を主人公とする本作こそ、日本において初めて登場したリアリティを持ったハードボイルド・ミステリである。
ロス・マクドナルドの強い影響を感じさせるが、昭和30年代の成熟と腐敗の気配を見せ始めた日本社会の暗部と悲劇を描写した、その世界は古びていない。
「公園には誰もいない」「炎の終り」と続く本シリーズは必読だ。
国産ハードボイルド作品の傑作中の傑作
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傑作国産ハードボイルド作品の中でも外すことのできない、探偵真木シリーズのスタートラインに立つ作品。オリジナル角川文庫版です。ロス・マクドナルドからの流れに位置する傑作小説であります。事件の起こる家庭の暗い運命を真木が追い詰めていきます。一人称で書かれた物語に共通する、まるで自分が物語りの中に入り込み、私立探偵となって事件を解決していく、バーチャルな感覚を体験することができます。そしてその体験は上質な物語であればあるほど、バーチャル度は高まっていきます。
日本ハードボイルドの原点
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先年惜しくも亡くなった結城晶治さんは、都築道夫さんと並ぶ鬼才だったと思います。結城さんの作風は一作ごとにまるで異なりますが、この『暗い落日』に始まる「私立探偵真木シリーズ」は、ハメット、ロスマク、チャンドラーの本格ハードボイルドの系譜を日本に移植しようとした野心作です。中でも、この『暗い落日』はおすすめです。原寮さんもこのシリーズに影響を受けたと明言しておられますし、原さんのファンであれば必ず気に入ると思います。