学校へ行きたくても行けないという時代の香り
★★★★★
明治という「時代」の香りが漂ってきます。
それは、芳香でも、臭気でもないのです。
学問がしたいのに、貧乏であるばかりに中学へも行けない吾一少年。
裕福ではないが、何となく時代の流れで大学へ「行った」自分。
しかし、吾一少年のほうが生き生きとしているのはなぜだろう。
100年後の子孫たちに、私たちの時代はどのように香るのだろう。
歯を食いしばっていかなければ…という読後感が残る一冊です。
十分に読み応えのある小説
★★★★★
主人公である吾一のひたむきさに古臭いなどと感じられない程、生きた小説であると思います。所々、辞書をひかないと分らない単語(古い言葉)もありますが、それさえもなんだか懐かしいような気にさせられます。
一番印象的だったのは、「おともらいのおきよ」です。今の子供達にはピント来ないかもしれませんが、昔はこういうばあさんがいたようです。笑
なんだか、ほのぼのさせられる箇所でした。
お薦めの一冊です。
考えさせられる本
★★★★★
話としては「しろばんば」「次郎物語」と同じく一人の少年にライトを当てた小説ですが、この二作と違い、主人公吾一は時代(明治時代)をつらく生き、苦悩した少年だと思います。貧しさ故に奉公に出され、自分より下の友人に頭を下げなければならない吾一のくやしさ、苦悩が淡々と、しかし強く書かれています。成長していく中でもつらいこと、悲しいことが色々ありますが、その中で知り合う人たちとの関わり合い、くじけずに強く生きていくこの少年に、教えられることはたくさんあります。所々にその頃の時代の状況が詳しく書いてあるので、勉強になりました。年齢を問わず、是非読んで欲しい本です。
路傍の石
★★★★★
私は小学校の時、初めてこの本を読みました。今、数十年ぶりに改めて読み終えました。
時代が変わっても、人間の生き方の基本姿勢は変わらないのではないでしょうか?
明治時代の日本の貧しいがひたむきな社会状況も伺えます。
小学校卒業後奉公にでた少年が、つらいことがあっても、真摯に生きて行く姿を描いています。
年代を超えて、純粋に感動出来る書物です。
勤勉な主人公の姿に自分の生活を反省。
★★★★☆
久々に教養小説とよばれるものを読みました。「努力や根性といった言葉にアレルギーを覚える」なんて調子にのって嘘ぶいていた自分が情けなくなりました。どんどん肩身がせまくなって、どうにも小さく小さくなってしまわざるを得ない読書体験でした。 また吾一や彼をとりまく人々の世渡りを眺めているとその切実さには自分自身励まされました。 努力や根性、それはおおいに素敵なことばです。 大人になって子供のころみたいに、親や先生に親身になって説教されるということが無くなってしまったからこそなのか、その分胸にこたえます。 小説のなかで吾一が実感をもって幾度も心の中で呟いた「人間は所詮ひとりぼっちだ、自分だけを頼みにして生きてゆくんだ」という言葉が特にずっしりと心に残りました。人間が誇り高く立派に成長していくこのような教養小説にハマりそうな予感です。