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こころの医者のフィールドノート (エビデンス選書)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 情報センター出版局
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医師として人として患者と会う ★★★★★
著者が文中に書いているように「病気」を書いたのではなく、出会った心に残っている人を書いてます。医師として患者と出会い、その人の治療後を見据えた接し方はすばらしいと思いました。精神病の再発防止には欠かせないこととはいえ、なかなかできないことでは?と思いました。
でくのぼうと言われても ★★★★☆
精神科医である著者が、出合った患者のことを書いている本なのだが、「症例」とか「研究」とかいうパッケージに人間を入れた書き方ではない。幾人かのひとの人生の断片を見せてくれる人間スケッチだ。

 だから読んだ人は、ただ人間として、それらの話に感慨を覚えるだけだ。こういう家族を持ったとして、さてどうしたら良いのかなどのノウハウを学ぶ本ではない。こういう治療を行ったということも具体的に出てくるわけではない。こころの病を持った人やその周辺にいた人のエピソード集だ。読むとなぜだか暖かいものに包まれる。中沢氏の眼差しが自然と伝わる。

 言葉を発しない四歳の円(まどか)ちゃんを見て、「紅葉の見頃は短いのですよ。たった一日、それも夕陽の一刻なんです。しかも、色づきが年によって違うから本当の美しい紅葉を見るにはただひたすら待つことが必要です。わたしどもも、その一刻を待っているのです」と語る家族のエピソード。恋をするたびに、少しのつまづきで分裂病を発症してしまう女性。幸せを逃し続け、最後には「どうしてもあなたと・・」という人に出逢う。病気が故、何度も断り、葛藤を繰り返した末に、とうとう見守ってくれる人と結ばれる楚々とした美人の話。どれも胸を打つ。

 わけても「おぶうちゃん」という一篇にはいろいろな思いが湧き起こった。「おぶうちゃん」とは患者さんではなく中沢氏が子どもの頃、街にいた知恵遅れの女の人だ。いつもほおかぶりをして籠を持ち街を機嫌よく歩き回っていたという。こどもが悪いことをすると、「おまわりさんに言うよ」というかわりに「おぶうちゃんに、くれちゃうよ」などと言われたそうだ。そういえば私の街にもそういう人がいた。人々が誉めもせず、しかし、のけ者にもせずに街に共存した心の優しい人。宮沢賢治の「けんじゅう」を思い出した。空を見上げ「はあはあ」と呼吸し幸せを示す人。私の実家にも昔から癲癇持ちで下働きの○○さんという人がいる。身寄りもほとんどなく年老いてきて背中の曲がった○○さん。他人に誉められたい㡊か、りっぱになりたいと思わずに、ただ淡々とにこにこと暮らす人。

 「レナードの朝」でも思ったが、幸せのかたちって…と思いを巡らせる一冊だった。