民俗学の天才にして、古代呪術に精通した一色信夫とは一色正和の祖父である。そして正和が語る自分の家族の死は曖昧で母が死んだのは『5歳』『8歳』などこの巻では『小学1年』である父は自殺とされているが、真相は不明。となれば、祖父信夫が死んだのは母の死後2年後とあるが、真相は定かではない。話によって設定が変わるとも解釈出来るが、疑問点は本作収録の『魔夜桜』、15巻の『立体写真の謎』といい、印象的に残りやすい過去なのに、何故正和は忘れているのか?他にもそのつど思い出す事が多い正和。その記憶の謎の鍵を彼の祖父、信夫が握っているような気がしてならない。そして正和は家族の死のトラウマ故か記憶が曖昧になっているのか…

鎌倉のさとの霊気にしたがって何が起きようと、それはミステリーのあたらしいジャンルにあたっていて、巻を重ねてすでに一つの小世界を構成しています。

思いだすと、ポオによる世界初のミステリーも、人間による犯行ではありませんでしたね。

和洋の昔話、フォークロアを自然な雰囲氣の中で自在に採り入れてゐる、その軽やかさに驚きを感じます。さすが、紫綬褒章受章だけの事はある!!掲載されてゐる作品は、どれもほのぼのとした懐かしさを感じる現代の御伽話のやうに思へてなりません。一話一話を読み味はへば、今の世の中も楽しく生きて行けさうです。次に続く作品への期待も高まって来てゐます。