彼の才能は20世紀止まりかと嘆いていたこのごろ、去年あたりからアニタ・ベーカー、パティ・ラベル、タミア、ジャネット・ジャクソンなど色々なベテラン女性シンガーに提供した曲はどれも力作で、少し重低音を増してハネないグルーヴ感を手に入れたプロデュースは、90年代の全盛期を取り戻したような曲の数々は、おのずとソロアルバムへの期待を膨らませるものだった。ヒットこそしてはいないが、曲の奥行きは素晴らしい。沈黙期寸前のTLCやトニ・ブラクストンなどに提供した駄作を思えば、喜ばしい限りだ。
今回のアルバムの布陣は弟子のThe UNDERDOGGSを除けば新パートナーとの曲がほとんどで、ゲストラッパーやシンガーなどもおらず、あくまで自分の曲、アレンジ、ボーカルで聴かせようという自信作でもある。お蔵入りになった最新アルバムの前衛的なアルバムとなったLOVESTORYはミドルなラブバラードばかりだと聞いていたが、今回は乗っけからグルーヴ感溢れるお特異のミドルナンバー。意外とノリが良いことに驚いた。作曲の感覚も戻っていて、素晴らしい曲が続くが、流石に後半になってくるとダラダラ感が漂いはじめる。が、最後の曲がアップテンポだったり、オマリオンに提供したようなボトムの効いたUNDERDOGGSの手がけた楽曲は、アルバム全体のメリハリを効かせる重要な役目になっていて、それが単調になりかねないアルバムを救っている。