現実と幻想、無垢な魂、どこにもない世界へ
★★★★★
今からずっと昔、
静かな夜。
街外れの丘を登ると、
暗闇の中に街の灯がちかちかと瞬く。
その光景がいつの間にか幻想へ変わっていく。
「銀河鉄道の夜」は美しい童話です。
ジョヴァンニとカンパネルラはなぜ銀河鉄道で旅をするのでしょうか。
そこに描かれているのは、
宮沢賢治が夢見ていた世界や彼の抱えていた孤独。
もっと言えば、賢治の無垢な精神だと思います。
ジョヴァンニの家の食卓には、
牛乳と角砂糖とトマト、それにパンが並んでいます。
その場面が忘れられません。
日本なのに日本でない、
ここに童話としての卓越があると思います。
夜の牧場の場面と印刷所の場面も大好きです。
きれいな宝石箱のような作品です。