進化論に関係した科学者が学問上に果たした役割や位置づけの解説本
★★★★☆
この本は、筆者が月刊誌「ナチュラル・ヒストリー」に300回に亘って長期連載したエッセイを、9冊目のエッセイ集としてまとめたものである。内容は、副題にあるように進化論に関係した科学者が学問上に果たした役割について、単なる伝記ではなく、その時代背景を踏まえた上での重要な進歩や位置づけを解説している。
贋の化石に騙され書物まで出版(1726)したべリンガー博士、近世ヨーロッパ初の学会組織「山猫アカデミー」を創設(1603)したアクアスパルタ公爵、近代科学を誕生させる活動の端緒の哲学者フランシス・ベーコン(1561-1626)、自然史学に燦然と輝く全36巻の大著を物した仏人ビュフォン(1707-1788)、化学の開祖であり近代地質学の開祖でもありかつフランス革命のギロチンに消えた天才ラヴォアジェ(1743-1794)、生物学の名称を初めて使い生物の分類体系に生涯をささげたにもかかわらず進化論で不当に攻撃されているラマルク(1744-1829)、地質学原理を著したライエル(1797-1875)の7名について、上巻は取り上げている。
筆者が取り上げた具体的な内容・教訓は、いずれも非常に切り口が鋭く(筆者が古生物学者であるだけに地質学に偏りすぎてはいるものの)本当に面白い。グールドの本は、その博識と文才の面からの面白さに関して、他の生物学者のそれをはるかに凌駕すると思う。