発達への視点こそが特別支援教育
★★★★☆
特別支援教育においてなぜ発達的観点が必要か?
「はじめに?」の副題でもあるこの言葉が本書の要点をよくまとめている。
本格実施しつつある特別支援教育。
特別支援教育とはこれまでの特殊教育とどう違うのか?
発達障害やそれに類する行動の難しさに対する観点と言うところに落ち着くのではないか?
これまでは傍流的な位置であった発達障害が主流になってきたということであろう。
発達障害といっても高機能自閉症などのいわゆる発達障害だけでなく、発達への障害全般、発達という絶えず変わりゆくものへの視点が表に出てきたような気がする。
静的なものとしての障害や課題ではなく、動的な、これからも変わりうる、卒業後も変化し続ける存在として生徒をとらえていく時代ではないか。
本書ではアセスメント、各種障害といった分野だけでなく、乳幼児から成人期までの一生涯に渡る支援について様々な立場の筆者からの有意義な論文を集めている。
個人的には発達障害以外の旧来の特殊教育の対象であった各種障害についても紙幅を裂いている点に好意がもてた。どうも特別支援教育が話題になると特殊教育との連続性が強調されない嫌いがあった。やはり特別支援教育はこれまでの特殊教育を基盤として築かれるべきであると個人的には感じている。だからこそ各種障害に対する記述の存在が嬉しかった。
この1冊で特別支援教育に関する主要なトピックスは網羅されていると言っても過言ではあるまい。文章も専門用語は多いものの難しすぎず、簡単すぎずといった程度。
特別支援教育について知りたい人や再確認したい人にはお薦めの本である。